これは、１９世紀末に活躍したフランスの女性作家シドニー＝ガブリエル・コレットの半生を映画化したもの。

　１８９３年、コレットは１４歳年上の人気作家ウィリーとの結婚を機に、パリへと移り住む。
　結婚の後、ウィリーが作品を他の作家たちに書かせていた事を知ってコレットは失望するが、その一方で、ウィリーはコレットの才能に気づき、彼女に自伝的小説を書かせ、それを自身の名義で発表。その小説、「クロディーヌ」は瞬く間に誰もが知る大ベストセラーとなる。
　ウィリーの浪費癖のせいで生活は常に苦しく、ウィリーはコレットに新作の執筆を求め続け……

　これは、女性に社会的地位のなかった時代、己の才能を活かして思うように生きようと望んだ女性の姿を描く物語。
　女性が女性の名で作品を出せず、夫の作品として発表され、その成果も栄誉も横取りされる……と言う物語は、映画だけでも「ビッグ・アイズ」、「メアリーのすべて」、「天才作家の妻」など数多ありますが、この映画が描くコレットは、夫のゴーストライターとして作品を世に出すのだけど、これが一方的に搾取されるだけの関係にない所が面白い所。
　夫は、妻の文才を自分のものとする代わりに、妻が自由である事を許し、結果として、コレットは当時の女性としては、考えられない程の自由と奔放な生活を送る事になります。その一例として描かれる、夫婦がひとりの女性を同時に浮気相手にしていた……と言うのは、ブラックジョークを踏み越え、ドタバタギャグに近いほど。
　この奇妙な二人三脚は終盤まで続き、その破綻を以て物語は結末を迎えます。そこで語られる「作品こそが夫婦の間の子供」であり、だからこそ、自分の名前で小説を出版出来なくともコレットは納得していた、と言うのには複雑な思いになりました……だからこそ、大抵の事に我慢して来たコレットが、「クロディーヌ」の版権を売り渡したウィリーに遂に見切りをつけるのです。

　コレットを演じたキーラ・ナイトレイは、冒頭、三つ編みお下げでコレットの少女時代を演じるのにはさすがに違和感があったものの、その後は文句のあろう筈がありません。
　ただ、ウィリー役のドミニク・ウェストは冒頭から胡散臭く、こんな男にコレットが惹かれる事に説得力がなくて、どうにも力不足の印象でした。

　女性が自由でいられなかった時代に、こんなやり方で自由を勝ち得たコレットの生き様には感心するしかありませんが、この物語が映画として作られた現代、その理由にも考えさせられます。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

ウォッシュ・ウェストモアランド

　■出演

コレット　・・・　キーラ・ナイトレイ

ウィリー　・・・　ドミニク・ウェスト

（その他のキャスト）
　フィオナ・ショウ　　デニース・ゴフ　　エレノア・トムリンソン　　ロバート・ピュー　　レイ・パンサキ

　■コピー

ココ・シャネルに愛され、オードリー・ヘップバーンを見出した、実在の小説家

　■Ｌｉｎｋ

https://colette-movie.jp/

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