ＴＨＥ
ＷＡＶＥ
ザ・ウェイブ

　これは、第８８回アカデミー賞外国語映画賞ノルウェー代表に選出された災害パニック映画で、ノルウェーでは大ヒットとなった映画。
　監督のローアル・ユートハウグは、この大ヒットにより「トゥームレイダー：ファーストミッション」の監督に抜擢される事となりました。

　ノルウェーの世界屈指の絶景スポット、ガイランゲルフィヨルドで地質研究に取り組んできた地質学者のクリスチャンは、ある日、フィヨルドを囲む岩盤層に大規模崩落に繋がる異変を察知。
　岩盤崩落は、狭いフィヨルドで海面上昇を引き起こし、最奥部では波高８０ｍもの巨大津波となる。しかも、岩盤崩落から津波の到着までは１０分。災害センターでは、無用な騒ぎは引き起こしたくない、と警報発令に消極的で、様子見の調査を継続するが、その直後、岩盤が崩落して……

　この映画、なるほど、地震国ではなくともフィヨルド地形にはこうした天災リスクがあるのか……と言う視点が目新しく、災害パニックものとしても、咄嗟の判断の重要性や、正常性バイアスによる初動の遅れなども描かれた内容は見応えがありました。
　また、如何に観測を続けながらも、警報を出す判断の難しさなども描かれ、災害パニックものとして、なかなかリアルでよく出来ており、これは大ヒットとなったのも判ります。
　津波被災地の様子は、東日本震災の状況をリサーチしたのでしょう、これまたリアルに再現され、泥まみれの溺死体が転がる凄惨な現場の描写を逃げない辺りにも力の入れ様が判ります。

　津波発生後は、一家の主でもあるクリスチャンが家族を救う描写となるのですが……ホテル地下の津波避難所からの脱出劇がいささか冗長で、尚且つ、ドラマを過剰に盛り上げようとしたせいで、却って白けてしまったのが残念……
　むしろ、家族をほったらかしにしてもみんなを救う為に頑張る父クリスチャンと、息子の為に他人を殺してしまう事も厭わない妻と言う対照的なキャラクターを対比させ、そこにドラマを作り込んだ方が面白くなったのではないでしょうか？


ＰＳ
　ちなみに、「ザ・ウェイブ」は２０１５年の映画なのですが、この映画、津波映像があるので宣伝が打てないとされ、来場者を見込めないとして、なかなか買い付けられなかったのだとか……
　津波にトラウマがある被災者を慮って、と言う理由は判らなくもないのですが……「記憶を風化させない」とか口ではいいながら、「被災者の事を考えろ」と言う横やりが入れられるせいで、津波の恐怖を伝える事も出来ないって世の中、何か変なのではないでしょうか？　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

ローアル・ユートハウグ

　■出演

クリスチャン　・・・　クリストファー・ジョーナー

（その他のキャスト）
　トーマス・ボー・ラーセン　　アーネ・ダール・トルプ 　　ジョナス・ホフ・オフテブロ

　■コピー

到達まで、あと１０分――

　■Ｌｉｎｋ

http://www.interfilm.co.jp/thewave/

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