これは、ドイツのスーパーマーケットを舞台とした人間ドラマ。
　出演は、「未来を乗り換えた男」のフランツ・ロゴフスキ、「ありがとう、トニ・エルドマン」のザンドラ・ヒュラー。

　旧東ドイツのライプツィヒ近郊。アウトバーン沿いの巨大スーパーマーケットに、２７歳の青年、クリスティアンが在庫管理の飲料担当として試験採用される。極端に無口なクリスティアンだが、同じ職場の年配の頼れる先輩社員のブルーノにひとつひとつ仕事のやり方を教えられ、少しずつ職場に馴染んで行く。
　やがて、隣の菓子担当の年上女性マリオンに一目惚れしたクリスティアンは、不器用ながらモーションをかけるが、マリオンには夫がいて……

　「美しき青きドナウ」の流麗な響きと共に幕を開ける物語は、いかにもドイツらしい殺風景な巨大スーパーマーケットを舞台に始まります。
　登場人物は何れも寡黙で、訳アリの過去を容易く口にはしません。特に無口なクリスティアンは、これで周囲の人間関係大丈夫か、と危ぶむ程に口を開きません。
　物語は、そうした寡黙な空気の中、日常の出来事を積み重ねてドラマを作り上げて行きます。
　静かで地味とさえ言える映画ですし、日常の中、見落とされがちな小さな気づきを繊細な演技の中から拾い上げて行く物語は、現在の主流である「判り易い」ものではありません。
　それでも、そこに微かな灯火があれば、人は寄り添い合って生きて行ける……映画の描こうとするものは判るのですが、これには期待し過ぎたせいもあって、観終えた後、何となく食い足りないと言うか、物足りない印象を受けました。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

トーマス・ステューバー

　■出演

クリスティアン　・・・　フランツ・ロゴフスキ

マリオン　・・・　ザンドラ・ヒュラー

ブルーノ　・・・　ペーター・クルト

（その他のキャスト）
　アンドレアス・レオポルト　　ミヒャエル・シュペヒト　　ラモナ・クンツェ=リブノウ　　クレメンス・マイヤー

　■コピー

はかなく密やかに、祝福のように
ままならない人生にも、美しい瞬間がある

　■Ｌｉｎｋ

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