これは、「勝手にしやがれ」などで知られるヌーヴェル・ヴァーグの巨匠、ジャン＝リュック・ゴダール監督の新作。
　様々な絵画、映画、文章、音楽のコラージュし、暴力、戦争、不和などに満ちた現代世界が向かおうとしている未来への怒りを込めて綴った全五章の物語です。
　
　暗闇から浮かぶ色彩と様々なイメージ……失われた平和な楽園“アラビア”……暴力、そして戦争……
　この映画、“物語”とあるけれど、語られるものはなく、そこにあるのは言葉の断片が漂うイメージの洪水であり、ストーリーの要約は困難です。

　これは、老年に至ったゴダール監督ならではの、「わかる人だけがわかればいい」と言う、観客を突き放すもので、内容としては完全に映像アート作品。映画に物語を求める人、そして判り易いものを求める人を拒絶したものになっています……これは観客を選ぶでしょう。
　映像としては、粗い画質で、コントラストを強調。赤と青と言う原色を誇張したもので、個人的には好みではないものの、そのどぎついまでの映像インパクトは確か。特異な音楽と被せられたゴダールのつぶやきと共に強烈な印象を与えるものとなっています――ただし、目に厳しく、目の疲れとイメージの洪水に脳が疲れ、中盤、眠くなってしまいましたが。

　アートだけに、それを解説するのも野暮なのですが、受けた印象としては、これは、聖書やコーランなど、言葉を記し人を律した本に代わる、映像と音楽による新たな人々の指針となる、新たな“本”の形を模索するものではないか、と感じました。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ジャン＝リュック・ゴダール

　■出演

ナレーション　・・・　ジャン＝リュック・ゴダール

（その他のキャスト）
　ディミトリ・バジル

　■コピー

何ひとつ望み通りにならなくても
希望は生き続ける

　■Ｌｉｎｋ

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