魂のゆくえ
ＦＩＲＳＴ　ＲＥＦＯＲＭＥＤ

　これは、「タクシードライバー」の脚本を手がけた事で知られるポール・シュレイダー監督が、長年温めて来た人間ドラマ。
　出演は、イーサン・ホークとアマンダ・セイフリッド。

　ニューヨーク北部にある、小さな教会“ファースト・リフォームド”の敬虔な牧師トラーは、戦争で失った息子への罪悪感を背負っていた。
　ある日、トラーは信者のメアリーから夫・マイケルの悩みを聞いてほしいと頼まれる。環境活動家であるマイケルは、地球温暖化など環境悪化から未来を悲観し、子供を持つ事に希望を持てないでいた……　

　アメリカのキリスト教徒のうち、約２５％を占める福音派はキリスト教原理主義的な考えを持ち、近年“メガ・チャーチ”と呼ばれる巨大教会で一度に数千人の信者を集める派手なパフォーマンスを行って多額の寄付を集めています。
　この映画の主人公トラー牧師は、小さな教会で活動していますが、その教会は、福音派の巨大教会の傘下、と言う関係にあります。
　福音派では、かつて同性婚の禁止を政府に了解させるのと引き替えにイラク戦争を容認しています。結果、トラー牧師の息子は、イラク戦争に出征し、戦死しているのです。
　そして、現在、福音派は政府に人工中絶の違法化を要求、その引き替えに環境政策に言及しない、としているのです。
　そんな背景から、トラーはマイケルがメアリーのお腹の子供を中絶しようとするのを止めさせ、地球環境など問題ではない、と説教しなければならないのですが、トラーにはそれが出来ず、己の信仰心と、福音派教会への不信感で引き裂かれて行く……と言う展開。

　これは現代のアメリカにおけるキリスト教のあり方を考えさせられる興味深い内容であると共に、ポール・シュレイダー監督の宗教観も垣間見えたように感じました。
　政教分離の方針がありながら、政治に接近する教会と、それを利用する政府……歪められる政治と、信仰の中で苦悩するトラーの姿を描く映画は、最後に静かながら壮絶なクライマックスを迎えます。
　ファースト・リフォームドの２５０周年記念式典で、トラーは当初、テロリズムに訴えかけようとするも断念、次いで殉教しようとするも、それもまたひとりの女性への愛に負けてしまう、と言う描写には、教会、と言うよりも、キリスト教に対する絶望のようなものを感じました。
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ポール・シュレイダー

　■出演

トラー　・・・　イーサン・ホーク
　
メアリー　・・・　アマンダ・セイフライド

（その他のキャスト）
　セドリック・カイルズ　　ヴィクトリア・ヒル　　フィリップ・エッティンガー

　■コピー

　■Ｌｉｎｋ

http://www.transformer.co.jp/m/tamashii_film/

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