ザ・バニシング　―消失―

　これは、１９８８年のオランダ映画祭最優秀作品賞受賞作。サイコ・サスペンスと先駆けと言われ、傑作と言われながらも日本では劇場未公開でしたが、３０年を経て漸く公開ととなりました。

　夏のバカンスで、でオランダからフランスへ向かうカップルのレックスとサスキア。
　だが、途中立ち寄ったドライブインで、忽然とサスキアが姿を消してしまう。レックスはサスキアを探すがその行方は判らず……以来３年間、彼女の行方を捜し続けているレックスの元に、犯人らしき人物から手紙が届く。
　レックスは意を決して再びフランスに向かったのだが……

　この映画、あのスタンリー・キューブリック監督が「これまで観たすべての映画の中で最も恐ろしい映画」と評した、というもので、それで興味が湧いたのですが、この映画の恐ろしさ、とは、常人では理解できない、犯人であるレイモンの“サイコパス”っぷりにあるのではないでしょうか――裕福で家族もいるレイモンが、何故、それをするに至ったのか。その犯行に至るまでを映画は視点を変えて描き、その辺りは余りの不器用っぷりに時に笑ってしまったりもするのですが――そうした描写の中から滲み出て来る、その常人とは何処かが違う、僅かな歪みのような違和感……彼に近づく事で、それがはっきりとし、気づいた時には後戻り出来なくなっている辺りは正にホラーです。
　ただ、レイモンをサイコパス、とするには、これまたちょっと違和感もあり、また、そうしたサイコパスものが数多く出て来た後の現在では新鮮味も薄れています。
　それでも、確かにラストはインパクトあり。
　サスキアの夢が予知夢であった事、そして、犯人が何故あれを行ったのか、と言う事に、あらためて恐ろしくなる映画でした。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本・製作

ジョルジュ・シュルイツァー

　■出演

ベルナール・ピエール・ドナデュー　　ジーン・ベルヴォーツ　　ヨハンナ・テア・ステーゲ

　■コピー

彼女は消えた、
跡形も無く、忽然と
彼はただ知りたかった、その行方を

　■Ｌｉｎｋ

http://www.thevanishing-movie.com/

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