これは、劇場版「クレヨンしんちゃん」で知られる原恵一が、柏葉幸子の小説「地下室からのふしぎな旅」をアニメーション映画としたもの。

　学校での気まずい思いがきっかけで、仮病で学校をズル休みした小学生のアカネ。
　その日は、アカネの誕生日前日。誕生日プレゼントを受け取ってきなさいと母親から言われ、骨董屋を営む叔母のチィを訪ねる。
　その骨董屋の地下室の扉から突然現れた錬金術師ヒポクラテスたちに無理やりワンダーランドへ連れて行かれたアカネは、色が失われる危機から世界を救う冒険に出るが……

　「クレヨンしんちゃん」以降、比較的現実志向のアニメが続いていた原恵一ですが、そんな地味な印象を覆す、華やかなものを作りたかった、と挑んだファンタジー作品。
　まん丸でモコモコの羊、巨大な鳥や魚が棲む、不思議な世界は確かにカラフルに描かれているのですが、これがどうにも物語が弾んでいかない印象。
　物語の推進力は弱いし、ギャグも滑り気味……ロシア人イラストレーター、イリヤ・クブシノブによるビジュアルは確かに悪くないものの、「攻殻機動隊」など日本のアニメの影響を強く受けたイリヤ・クブシノブは、それ故に、どこかで見たような世界観に終始し、目新しさがありません。
　また、こうした現実でない世界で、そこに生活感を出す演出もまだまだで、なるほど、これを観るとスタジオ・ジブリ作品と言うのは大したものだったのだ、とあらためて感じます。

　うじうじした性格で、それを自己嫌悪していたアカネが“前のめりの石”で積極的になれた、と言う、主人公の成長を見せる展開は定番としても、そんな部分もとってつけたように感じられるようで、どうにもすっきりしません。
　あの「千と千尋の神隠し」と比較するのも気の毒ですが、ビジュアルでもストーリーでも秀でた部分を見せられておらず、いささかがっかりな出来と思いました。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

原恵一

　■出演

アカネ　・・・　松岡茉優

チィ　・・・　杏

ヒポクラテス　・・・　市村正親

（その他のキャスト）
　麻生久美子　　東山奈央　　藤原啓治　　矢島晶子

　■コピー

アカネは、幸せ色の国へ！
それは、失くしていた“宝物”を見つける感動の冒険――

　■Ｌｉｎｋ

http://wwws.warnerbros.co.jp/birthdaywonderland/

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