アイリス
ＩＲＩＳ

　今日は、風邪気味のまま体調もよくないのですが、何せ熱っぽく、体の節々（特に腰）が痛んで寝ていられない。
　仕方ないので、８時過ぎには起き出して、午前中はバイクをいじったりなんかしながら（熱っぽいので表に出ていた方が気分がいい）過ごし、その後、映画を観に行く事にしました。

　映画は「アイリス」。
　これは、イギリスの女流作家、アイリス・マードックを巡る愛の物語です。

　”イギリスで最も素晴らしい女性”と讃えられた、アイリス・マードックだけど、１９９７年、アルツハイマー症である事が夫のジョン・ベイリーより発表され、その後、闘病生活の末、１９９９年に死去。
　この映画は、彼女の死後に、ジョン・ベイリーが書いた「アイリスとの別れ」を元に映画化したのが、この作品です。

　この映画は、アイリスが、ジョンと出会って結ばれるまでと、晩年に至って、アルツハイマー症の末にこの世を去るまでの２つのドラマを平行して描いて行きます。
　この、ジョンが、憧れ、尊敬する女性と人生を共にするに至ったドラマと、４０年間、共に人生を過ごしてきた伴侶を失う、と言う２つのドラマによって、入手と喪失がきちんと対比されて、ハーモニーを奏でる、これはなかなか巧みな作りです。

　映画の中心となるのは、晩年のアイリスのアルツハイマー症の様子。
　哲学者でもある、優れた作家のアイリスにとって、自分が言葉と思考と失う、と言う事がどれだけの恐怖である事か。
　そして、それを見つめるジョンにとって、長年連れ添った妻であり、尊敬もする作家のアイリスが、別のものになっていくというおぞましさ。
　これを、晩年のアイリスを演じた、ジュディ・デンチが迫真の説得力ある演技で見せているのは、さすがの一言です。
　また、ジョン・ベイリー役のジム・ブロードベンドの好演も光ります。（ジム・ブロードベンドは、本作でオスカー受賞）

　若い頃のアイリスを演じたのは、ケイト・ウィンスレット（これが出産後の復帰作品）。
　知性と行動力を兼ね備えた若い頃のアイリスを、相変わらずパワフルに演じていますが、出産後、ちょっと印象が変わったかな？
　全裸での水泳シーンや、ベッドシーンもあるけれど、あんまり、セクシーな感じではなかったなぁ。(^^;
　
　この映画を貫いているのは、ひとりの女性、アイリスを見つめ続けたジョンの視線の暖かさと、その奥に秘められた「愛」。
　それがアイリスの心を捉え、そして最後に奇跡を起こす。
　アルツハイマー症によって、言葉を奪い尽くされた彼女が発した言葉と、それに応じたジョンの言葉に感動します。

　（１月１２日　横浜・関内アカデミーにて）

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