山 <モンテ>

　これは、「ＣＵＴ」などで知られるイランの巨匠アミール・ナデリが、中世イタリアを舞台に1人の男と壮大な山の対峙を描くドラマ。

　アルプスの山の麓で、家族と暮らすアゴスティーノ。
　だが、山が太陽の光を遮るこの村では、思うように作物が育たず、満足な暮らしが送れずにいた。村人は次々に病に斃れ、アゴスティーノも娘を失う。付近の人々は“呪われた村”だとして村人をも忌避するようになる。村人は次々に村を去って行くが、先祖や亡くした娘の墓があるこの土地を離れる事はアゴスティーノには出来なかった。
　そして、神からも人々からも見捨てられた家族は、ハンマーを手に、その根源となる忌まわしき“山”と対峙する……

　これは、人からも神（自然）からも見放された男が、正に妄執によって己を抑えつけるものを打ち壊して行く物語です。
　男が打ち崩そうとするのものは、人々を絶望させる世の不条理か……その、描こうとする所は判らないではありませんが、語り口が主人公そのままに寡黙で判り難く、後半、“山”と対峙する際には、家族共々狂気に陥ったようで言葉すらなくなってしまいます。しかも、その対峙のシーンも余りに冗長で眠くなってしまいました。
　また、「自然」に、豊かで穏やかなものをイメージする日本人とは異なり、「自然」とは苛烈で厳しく、人が克服すべき苦難である、と言う見方は、西洋人――と言うよりイラン人であるアミール・ナデリ監督故のものでしょうか。

　映画としては、モノトーンに近い、極めて色調を押さえた画像で描かれる、寒々として貧しい暮らしと、そこに蔭を落とし、そして不気味な唸りを上げ続ける山と言う陰鬱なもので、ラストに起こる、男が生んだ奇跡にはカタルシスを覚えなくはないのですが、そこに至るドラマが弱く、感動を呼び込めなかったように思いました。
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本・編集・音響

アミール・ナデリ

　■出演

アゴスティーノ　・・・　アンドレア・サルトレッティ

（その他のキャスト）
　クラウディア・ポテンツァ　　ザッカーリア・ザンゲッリーニ　　セバスティアン・エイサス　　アンナ・ボナイウート

　■コピー

打ち砕け、人間の業<カルマ>を――

　■Ｌｉｎｋ

http://monte-movie.com/

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