ＭＯＳＴ　ＢＥＡＵＴＩＦＵＬ　ＩＳＬＡＮＤ
モースト・ビューティフル・アイランド

　これは、スペイン出身の女優アナ・アセンシオが実体験を基に監督・脚本を手掛け、自ら主演したスリラー。

　ニューヨークに暮らす不法移民のルシアナは、ベビーシッターや日雇いのバイトをして稼いでいるものの、極貧生活で今やホームレス寸前。
　そんな折り、友人のロシア移民、オルガからあるバイトを紹介される。一夜のパーティーに参加すれば２０００ドル、と言う報酬に釣られ、ルシアナが指定された地下室に向かうと、そこには、オルガを始め移民と思しき美女が何人も集められていた。
　そこに現われた裕福そうな男女が彼女らを値踏みした後、一人、また一人と得体の知れぬ奥の部屋に呼ばれて行く――疲れ果てた様子で戻り報酬と引き替えに開放される者もいれば、悲鳴を残し戻らぬ者のいる――不安と恐怖に駆られ、逃げだそうとしたルシアナだが、屈強な男たちに阻まれる。そして、遂にルシアナに声がかかり……

　これは８０分と言う中編で、低予算でありながら、なかなかよく出来たスリラー。
　ネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、クライマックスのエロティックさと生理的嫌悪感を同時に感じさせるいかがわしさは、正に見世物小屋感覚。このネタ１発で映画を引っ張り、不安と緊張を煽りながらも一気に見せ切る演出もなかなか。
　そして、そのクライマックスの“イベント”、これが実話を元にしている、と言う事に驚かされます。
　しかし、それもまた現代アメリカの一面。アメリカンドリームを叶える者もいるけれど、こうして、アメリカの暗部に食い尽くされて行く者のいる、と言う事でしょうか……

　ただ、この映画、確かに“見世物小屋”としてはよく出来ているものの、物語がちょっと弱い。
　冒頭で描かれたルシアナのトラウマが投げっぱなしになっているのもそうですし、クライマックスの後、「オルガの代わり」となるよう声をかけられたルシアナのその後も気になる所。
　移民女性を食い物にする富裕層と言う構図と、そこで繰り広げられるショッキングなイベント、と言う題材としては魅力的なだけに、“その先”を見たくなってしまった映画でした。
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

アナ・アセンシオ

　■出演

ルシアナ　・・・　アナ・アセンシオ

オルガ　・・・　ナターシャ・ロマノヴァ

（その他のキャスト）
　ニコラス・トゥッチ　　ラリー・フェッセンデン　　アミ・シェス　　デビッド・リトル

　■コピー

そこに墜ちれば、生きていける・・・

　■Ｌｉｎｋ

http://www.interfilm.co.jp/mostbeautifulisland/

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