ダンボ

　これは、ディズニー・アニメ「ダンボ」を「アリス・イン・ワンダーランド」などで知られるティム・バートン監督が実写化したもの。
　
　マックス・メディチを団長とする小さなサーカス団に、元看板スターだったホルトが戦争から帰って来る。だが、ミリーとジョーの２人の子供を残して妻はこの世を去り、戦場で片手を失ったホルトは得意の曲乗りもままならない。
　そんなある日、馬に代えてホルトが世話を任された象のジャンボに赤ちゃんが誕生した。大きすぎる耳を持つ子象、ダンボは観客の笑いものりとなってしまう。
　しかし、ダンボがその耳で飛べる事で、一躍、サーカスの人気者となり、やがて、エンターテイメント界の大物が運営する遊園地「ドリームランド」の目玉として招かれるのだが……

　アニメ「ダンボ」は第二次大戦中の製作で、前作「ファンタジア」不振の反省から、尺も短く、物語も子供向けでしたが、ティム・バートンの手による本作は、むしろアニメ版のエンディングからが本番、と言う趣。
　なので、「ダンボ」ってこんな話だっけ？となるのは確実でしょう。
　ダンボはオールＣＧですが、本物の象と並んでも違和感のない仕上がりはさすが。ただ、リアルに描けば描くほど、耳で飛ぶ描写に無理を感じてしまうのですが……
　あと、“ピンクの象の行進”には、こう来るか！と思わされたと共に、ティム・バートンならではの原作に対するリスペクトを感じました。

　フリークスへの偏見と迫害など、ティム・バートンらしい描写も随所に見られますし、物語上の悪役を、明らかにディズニーランドをイメージさせる遊園地「ドリームランド」とする（作中で「不可能が可能となる場所」と言うのは「夢がかなう場所」を明らかに意識したセリフ）辺り、外連味もたっぷり――もっとも、ミリーが最後、アニメーションを手掛ける事で、ディズニーはコッチだよ、と言うフォローをしてはいるのですが。
　ティム・バートン映画の常連、エヴァ・グリーンが悪女風に登場するも、徐々にヒロインとなって行くのも意外でしたが……やはり、ディズニー、“脱ぎ魔”のエヴァと言えどもふくらはぎまでしか見せません。
　
　ただ、この映画、出来はいまいち。
　ディズニーらしくもなくミュージカルシーンを廃したせいもあってか、前半はもたつきますし、中盤からは怒濤の展開を見せるものの、今度は設定と筋運びが粗い……ディズニー作品に期待される全世代向けのファンタジーとする方向性が、ティム・バートンらしさと上手く噛み合っていないようで、どうにも物足りない感じでした。
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

ティム・バートン

　■出演

ホルト　・・・　コリン・ファレル

マックス・メディチ　・・・　ダニー・デヴィート

コレット　・・・　エヴァ・グリーン

（その他のキャスト）
　マイケル・キートン　　アラン・アーキン　　ニコ・パーカー　　フィンリー・ホビンズ

　■コピー

「羽ばたけ！」
大きな耳を勇気の翼に変えて――

　■Ｌｉｎｋ

https://www.disney.co.jp/movie/dumbo.html

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