ＲＯＭＡ/ローマ

　これは、「ゼロ・グラビティ」などで知られるアルフォンソ・キュアロン監督が、Ｎｅｔｆｌｉｘにて製作し、ネット配信により公開された映画。
　ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞したものの、カンヌでは審査拒否。米・アカデミー賞では短期間の劇場公開により、外国語映画賞を受賞するなど、その完成度の高さと共に、映画公開のあり方についての議論を巻き起こす事になりました。

　１９７０年。メキシコシティのコロニア・ロマ地区の邸宅で、クレオは住み込みの家政婦をしている。主のアントニオ医師は、出張で家を留守にすることも多く、妻のソフィアとの間では口論が絶えない。実は。出張という話はでまかせで、愛人と不倫旅行に出かけているのだ。
　一方、クレオは恋人フェルミンの子供を妊娠するが、妊娠を告げた途端にフェルミンは彼女の前から姿を消してしまい……
　
　タイトルの「ＲＯＭＡ」とは、イタリアの都市ローマではありません。それならば英文スペルは「ＲＯＭＥ」で、これはロマ民族にちなんだ地名なのです。
　これは、そのロマ地区で生まれ育ったアルフォンソ・キュアロン監督の幼少期の記憶を元にしており、映画も、キュアロン家の家政婦・リボリアに捧げられています。

　全篇モノクロームの映画は、その特徴として、基本、フィックスのカメラで撮影されており、まるで防犯カメラの映像のような、躍動感のない映像は、奇妙に静謐な雰囲気を持ち、これが、生きて動いているドラマではなく、既に記録された記憶である事を示しているよう。
　クレオを演じた、ヤリッツァ・アパリシオは、メキシコ先住民出身でほとんど演技経験もないそうですが、その向こう側に、リボリアの姿を見ているかのようなキャアロン監督の愛情ある視線により、なかなかの存在感を見せます。我が子の生を望まなかった事を悔やむクレオが、泳げないのにも関わらず荒れる海から子供たちを救い出すクライマックスは、家政婦が実母にも劣らない愛情を子供たちに注いでいたと言う事を描く印象的なシーンです。

　アルフォンソ・キュアロン監督らしく、細部まで気を配って再現された１９７０年のメキシコ、よく考えられた完成度の高い構図と、よく出来た映画だとは思いますが、男は愚かで無責任、女は賢く強い、と言うステレオタイプな人物描写と、アルフォンソ・キュアロン監督自身の、リボリアへの感謝と謝罪を込めた物語に普遍性が乏しい事もあり、心を動かされる所には至らなかったと言うのが正直な所です。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

アルフォンソ・キュアロン

　■出演

クレオ　・・・　ヤリッツァ・アパリシオ

（その他のキャスト）
　マリーナ・デ・タビラ

　■コピー

　■Ｌｉｎｋ

https://www.netflix.com/jp/title/80240715

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