ナチス第三の男

　これは、ローラン・ビネのベストセラー小説「ＨＨｈＨ　プラハ、１９４２年」を元に、史上唯一成功したナチス高官暗殺事件を描く映画。
　
　１９３０年９月、ドイツ海軍士官のラインハルト・ハイドリヒは、社交場で出会ったプロシア貴族令嬢リナ・フォン・オステンと婚約。だが、その直後に女性関係の縺れから海軍を不名誉除隊となってしまう。
　ハイドリヒはナチ党支持者でもあるリナに励まされ、ナチス親衛隊に入隊、諜報活動で頭角を現す。
　ヒトラー政権成立後、国家保安本部長官となったハイドリヒは親衛隊長官ヒムラーに次ぐ実力者となり、絶大な権力を得て行くが……

　この映画、ナチス・ドイツの実質Ｎｏ．３で、ユダヤ人ホロコーストを立案したとされるラインハルト・ハイドリヒのプラハでの暗殺事件を描くものですが……このエピソード、最近でも「ハイドリヒを撃て！」と言う映画があったばかり。
　そこで、本作は、ハイドリヒが如何にしてその地位に上って行ったのかに比重を置いて描いているのですが……結果として、ハイドリヒ側と暗殺グループ側、２つのエピソードがハイドリヒ暗殺事件を節目として組み合わせられたような構成となってしまい、しかも、それらのエピソードがまるでかみ合わず、違う映画２本を継ぎ合わせた、まるで木に竹を接ぐような仕上がりになっているのには違和感がありました。
　確かに、女性問題で海軍を辞めたハイドリヒが、妻でナチス信奉者のリナによって人生を変えられ、当初はリナに引っ張られていたのが、やがてリナを追い越し、立場を逆転させていく辺りの展開はなかなか面白かったので、こちらに軸足を置いて描けば、先の映画と違ったものを見せられたのではないか、と。
　ハイドリヒ役は「ターミネータ／ジェネシス」のジェイソン・クラーク。リナは「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイクが演じているのですが、このロザムンド・パイクがよく、決して悪女ではないにせよ、ハイドリヒと、そして歴史をも変えたリナと言うファム・ファタールを魅力的に演じていただけに、ちょっと勿体ないな、と思ってしまいました。
　また、暗殺者側から見ても、ナチス・ドイツの占領政策の苛烈さを描く描写もあって、見応えのあるものになっているのですが、現状では２つのエピソード共中途半端となってしまったように思います。　
　

　（２０１９年　２月　２日　ＴＯＨＯシネマズシャンテにて）

（作品データ）

　■監督

セドリック・ヒメネス

　■出演

ラインハルト・ハイドリヒ　・・・　ジェイソン・クラーク

リナ・フォン・オステン　・・・　ロザムンド・パイク

（その他のキャスト）
　ジャック・オコンネル　　ジャック・レイナー 　　ミア・ワシコウスカ

　■コピー

なぜヒトラーでもヒムラーでもなく、
彼だったのか？

　■Ｌｉｎｋ

http://hhhh-movie.asmik-ace.co.jp/

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