十二人の死にたい子どもたち

　これは、冲方丁の同題小説を堤幸彦が映画化したサスペンス。
　
　廃病院の密室に集まった１２人の未成年者たち。
　彼らは、主催者であるサトシの呼びかけに応じ、全員で集団自殺するためこの場に集まったのだ。集団自殺は全員の合意を以て行い、自殺に反対する者がいるなら、その時は全員一致するまで話し合わねばならない。それがルールだ。
　だが、彼らはそこで１３人目のまだ生温かい死体を発見する――この中に殺人者がいる、となると集団自殺ではなく、殺人事件になってしまう……そんな疑問が湧く中で、行われた採決では反対者が出た。
　彼らは自殺をする合意を得る為、に犯人を見つけ出す事となるが……

　この物語は、タイトルからも連想されるように、「十二人の怒れる男」をベースにしています。密室に集まった１２人の男たちがある結論を出そうと話し合うが、反対する者がひとり現われた事から全く異なる結論が導き出される、と言う物語。
　そうした予備知識があると、この物語は先が読めてしまう――と言うよりも、タイトルにそれを出している事から、この若者たちは自殺とは異なる結論に達するだろう、と安心しながら観られる、と言う事でもあるのですが。

　そんな物語ですが、原作は冲方丁で、“密室殺人”のトリックは隙無く――むしろ、精緻に過ぎるくらい――に組み上げられており、謎解きミステリーとしては、それなりに面白いです。ただ、終盤、登場人物のひとりが“名探偵”になって、スラスラ謎解きしちゃうのはいささか芸がありませんが……この辺りは、時間の限られた映画で、一般の観客にも判るようにする為には仕方ないのかも知れません。
　また、現代の若者たちが抱える様々な問題を描き、最後は若者らしくそれを乗り越えて行こうとする結論に至る物語、終わってみれば後味もよく、その意味では青春群像劇として観る事も出来ます。

　キャスティングはなかなか意欲的、かつ挑戦的でで見応えがあります。若手俳優に今までにない役柄を与え、新たな表情を引き出しています。特に、杉咲花などはこれまでの役柄から大きく印象を変えています……ただ、新田真剣佑と北村匠海は役を入れ替えた方がよかったような印象です。新田真剣佑の鍛えられた肉体は、病弱で瀕死のシンジロウと言う役にはちょっと違和感がありました。

　ただ気になったのは、昨今、ネットでの呼びかけで集まった集団自殺や、それを真似た連続殺人事件などが実際に起きてしまっている中、この内容とタイトルはどうか、と……不謹慎な、と言う批判は好きではありませんが、そんな批判を受けても仕方がないような気がします。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

堤幸彦

　■出演

サトシ　・・・　高杉真宙

アンリ　・・・　杉咲花

シンジロウ　・・・　新田真剣佑

（その他のキャスト）
　北村匠海　　黒島結菜　　橋本環奈　　吉川愛　　萩原利久
　渕野右登　　坂東龍汰　　古川琴音　　竹内愛紗

　■コピー

　■Ｌｉｎｋ

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