チワワちゃん

　これは、岡崎京子による同題の青春漫画を映画化したもの。　
　主演は、映画語り手となるミキを演じる門脇麦で、その確かな存在感はさすがですが、この映画は、やはりチワワちゃんを演じた吉田詩織が素晴らしい。このつかみ所のない人物像を、見事に体現しています。
　
　東京。ネオン輝く夜の繁華街で若さを謳歌する男女グループのマスコット的存在だったチワワちゃんが、バラバラ遺体となって東京湾で発見された。
　チワワちゃんを偲んで集まったかつての仲間たちは、それぞれチワワちゃんとの思い出を語り始める――共に夜明けまでバカ騒ぎをし、恋愛をしていた仲間たちだが、誰もチワワちゃんの人生どころか本名すら知らずにいた……

　この映画、日本版「スプリング・ブレイカーズ」　と言った所でしょうか。また、岡崎京子原作の実写映画作品としては、これが一番の出来のような気がします。
　綺麗ごとの最近のキラキラ映画とは一線を画す、見事な出来栄えの青春映画。
　若さ、と言うのが、如何に愚かで、カッコ悪く、いい加減で、「絆」やら「友情」やら「愛」なんて言葉が如何に空虚なものかを叩きつける――何せ、“友達”の本名さえ知らなかったのですから。
　そんなうわべだけの華やかな空虚さを、言葉で飾るのではなく、若い俳優が身体を張って演じる。これもまた映画ならではの表現のあり方でしょう。
　そして、そんな空虚なバカ騒ぎを青春と重ね、それは何時か終わるものである、と言う事を資金の札束で示す辺りもいいし、そんな空虚で華やかな空気の中にいたチワワちゃんだからこそ、地に足を着けようとした途端に消えた、と描く岡崎京子のセンスには恐れ入ります。
　また、そんな東京でそんな青春を過ごす若者たちが、何れも東京に根を下ろしている者ではない、と言うのを示すのには、現在の東京と言う街のあり方を考えさせられました。
　
　もっとも、この映画は観る人を選びます。ハマる人には面白いだろうし、そうでない人にはゴミのような映画に見えるはず。
　（青春なんぞ、そもそもがそんなものなのだ、と言う人でないと判らない）
　出演する俳優は当然ながら若手中心ではあるものの粒揃いではあるものの、映画の作りはチープで、映画中では沖縄でのバカ騒ぎとなっているものの、実際には沖縄ロケに行けず、何処かの大学の温水プールを借りての撮影だったりする安っぽさはさすがに気になりました。
　また、「スプリング・ブレイカーズ」の突き抜けたような感じもなく、チワワちゃんの死に向かって、ずるずると深みに落ちていく展開にも爽快感はありません。
　ただ、だからこそ、最後にミキの見た幻が心に刺さるのですが……　
　

　（２０１９年　１月２２日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

二宮健

　■出演

ミキ　・・・　門脇麦
　
チワワちゃん　・・・　吉田志織

（その他のキャスト）
　成田凌　　寛一郎　　玉城ティナ　　村上虹郎　　仲万美　　古川琴音　　篠原悠伸　　上遠野太洸　　松本妃代
　松本穂香　　成河　　栗山千明　　浅野忠信

　■コピー

チワワちゃんが死んじゃった
一緒に遊んでたわたしたちはチワワちゃんの本名すら知らなかった

　■Ｌｉｎｋ

https://chiwawa-movie.jp/

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