アイ・フィール
プリティ
人生最高のハプニング

　これは、アメリカで絶大な人気を誇るコメディエンヌ、エイミー・シューマー主演のコメディ。

　高級化粧品会社で働くレネーは自分の容姿にコンプレックスがあって、何事にも積極的になれない。職場も中華街の地下にある通販部門のサーバールームで、ＮＹ五番街の本社勤務は憧れだけど諦めてしまっている。
　そんな自分を変えようとジムに通うレネーだが、バイクが破損して転落、頭を打って気を失ってしまう。
　そして、目を覚ましたレネーは、絶世の美女に変っていた――と、言うのは本人の思い込みだったのだが、レニーは見た目はそのままで超絶ポジティブな性格に生まれ変わる。自信に満ち溢れ、仕事も恋愛もすべてが絶好調になるが……

　アメリカ社会では、太っていると「自己管理能力がない」と見られて管理職に就けない、と言われたりするけれど、それが女性となれば尚更……これは、そんなルッキズム（容貌差別）問題を取り上げたコメディです。
　主演のエイミー・シューマーは、ぽっちゃり体型（とは言え、アメリカ人女性としては「太っている」とは言えないんじゃないかなぁ……）が特徴のスタンダップ・コメディアンで、日本で言えば渡辺直美的存在。
　映画は、そんなエイミー演じる主人公レニーが、外見そのままでスリムな美人になった、と思い込む所がミソで、誰しもが注目するような美女ならではの振る舞いを、カリカチュアライズして演じて見せる事で笑いを取るのですが……これは、ルッキズムの勝者に対する痛烈な批判にもなっている辺りが鋭い。
　そして、そんな“勝者”となったレニーが、それまでの“イケてない”友人を差別し始めるのも痛い描写です。

　しかも、この映画、そうした社会批判だけで終わらず、そんな社会の風潮を背景に、必要以上に容貌を気にし、それをコンプレックスとして気に病む人々にも救いの手を差し伸べます。
　容貌コンプレックスは、そうした“勝者”の側にもあり、外観的な美の追究には限りが無い事を示すと共に、自信があれば、そして前向きに取り組む姿勢があれば、自分を変えられる、と言う事を描いて、仕事でも恋愛でも、大事なのは見た目ではなく中身、と言う、力強いメッセージを示すのです。
　ただ、内容としては、これはやはり女性向けでしょうか？――結構、女性客からは笑い声が上がっていても、ちょっと反応に困るような描写が多々ありました。

　あと、共演のミシェル・ウィリアムズは、レニーの働く会社のＣＥＯを演じているのですが、これがイヴァンカ・トランプそっくりで、最初はミシェル・ウィリアムズと気づかなかったくらいの変貌ぶりでした。


ＰＳ
　日本語吹き替え版では、レニー役を渡辺直美がやっているのですが……このまま渡辺直美主演で日本版をやれば面白いのでは、と思ってしまいました。　
　

　（２０１９年　１月　２日　１０９シネマズ川崎にて）

（作品データ）

　■監督

アビー・コーン　　マーク・シルヴァースタイン

　■出演

レニー・ベネット　・・・　エイミー・シューマー

エイヴリー・ルクレア　・・・　ミシェル・ウィリアムズ

イーサン　・・・　ローリー・スコーヴェル

（その他のキャスト）
　エミリー・ラタコウスキー　　エイディ・ブライアント　　トム・ホッパー　　ビジー・フィリップス　　アドリアン・マルティネス
　ナオミ・キャンベル　　ローレン・ハットン

　■コピー

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