ハナレイ・ベイ　
　　　　　　Hanale1 Bay

　これは、村上春樹の連作短編集「東京奇譚集」の1篇である同題小説を松永大司監督が映画化したもの。
　
　ピアノバーを営むシングルマザー、サチのもとに、ハワイのカウアイ島にあるハナレイ・ベイで息子のタカシがサメに襲われて亡くなったとの知らせが入る。
　サチがプレゼントした赤いサーフボードに乗った彼は、ウミガメを追って湾内に入ったサメに右足を食いちぎられたのだ。
　それから１０年……サチは毎年タカシの命日の時期にハナレイ・ベイを訪れ、海を眺めて過ごしていた。
　ある日、サチは２人の若い日本人サーファーと出会う。そして彼らから、赤いサーフボードを持った右脚のない日本人サーファーを見た、と聞いて……

　サチを演じるのは吉田羊。この映画は、彼女のクールさと強かさ、そして、年齢不詳さによって成立しているのではないか、と思います。
　また、日本人の若いサーファーを演じた村上虹郎も、年相応の快活な青年を演じて好印象。
　ただ、何れも俳優の持ち味に頼っている感があるのが気になりますが……

　原作小説は未読ですが、この物語のテーマは、家族の「死」を如何に受入れるか、と言うものでしょう。
　愛していたけれど、嫌いになってしまった夫……憎みながらも、思い出を捨て切れないでいた、そんな夫に、徐々に似て来る息子を好きになれなかった彼女。背負って来たもの、歩いて来た人生があり……家族だったのに、強がって、突っ張って言えなかった、伝えられなかった想い、それらが吹き出す、後半の慟哭と、もう一度会いたいと言う気持ち。
　それを彼女が受入れるのに１０年と言う歳月を要したと言うことか……その先で、漸く心が繋がったのを振り返った一瞬で見せたラストカットにはゾクリ、としました。 　
　

　（２０１８年　１２月　４日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

松永大司

　■出演

サチ　　・・・　吉田羊

タカシ　・・・　佐野玲於

（その他のキャスト）
　村上虹郎　　佐藤魁　　栗原類

　■コピー

伝えたい。
どんなにあなたを愛しているかを。

　■Ｌｉｎｋ

https://hanaleibay-movie.jp/

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