ガチ星

　これは、江口カン監督の映画デビュー作となる映画。

　濱島浩司はプロ野球選手として活躍しながらも３０過ぎた所で戦力外通知を受け、解雇されてしまう。
　酒とタバコとギャンブルが好きで、プロ野球選手でなくなっても止められない。妻は子供を連れて出て行き、幼馴染みが営む居酒屋で手伝いをするものの、その妻と浮気して居場所を無くしてしまう。
　そんなダメ男全開の濱島は、馴染のラーメン屋で「競輪学校なら幾つでも入学できる」と聞いて入学はしたものの……

　監督曰く「苛々するようなダメ男」の再生、と言うか人生の岐路を描く、この映画。
　濱島は、人生のピークであったプロ野球選手からセカンドライフ構築に失敗。転落を繰り返すのだけど、そんな濱島は、競輪学校の同期、久松の、
　「これっきゃない」
　と言う言葉に彼をライバル視して、その背中を追う事になります。
　やがて、ある事故をきっかけに、濱島は、酒もタバコもラーメンすら止めて、練習に没頭。やがて同期トップの久松とガチで戦うまでになります。そんなクライマックスのレースはさすがに盛り上がるし、人生、何時からでもきっかけひとつで変わる、と言うのは、確かにドラマティック。

　物足りなかったのは、レースシーンで競輪場のスタンドに誰もおらず、観客一体となるレースの盛り上がりを描けていない事。
　確かに、低予算故、エキストラの動員も出来ず、ＣＧで書き込む事も出来なかったのでしょうが……それでも、ここは工夫を見せて欲しかった所。
　（実際のレースシーンの観客席を写すとか、観客席に「ダンケルク」よろしく書き割りの観客を配置するとか……）
　また、クライマックスの勝負もガチの体力勝負ではなく、ラインにおけるポジション取りなど頭脳戦でもある競輪競技で、濱島の４０男ならではの人生経験ってのも見せて欲しかったようにも思いました。

ＰＳ
　この映画、今年の日本映画最大の話題作の「カメラを止めるな！」と同じＫ’ｓ　ｃｉｎｅｍａで同時期に上映。
　「カメラを止めるな！」を観られなかった観客が流れ込んでくれたお陰で、地方発のマイナー映画としては上々の興収を上げ、それで注目された江口カン監督はメジャー作品を手掛ける事になったそうです。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

江口カン

　■出演

濱島浩司　・・・　安部賢一

久松孝明　・・・　福山翔大

（その他のキャスト）
　林田麻里　　船崎良　　森崎健吾　　伊藤公一　　吉澤尚吾　　西原誠吾
　博多華丸　　モロ師岡

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俺の人生を、笑うな。

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