追想

　これは、「つぐない」で知られるイアン・マーキュアンの小説「初夜」を、ドニミク・クック監督が「ブルックリン」のシアーシャ・ローナン主演で映画化したもの。

　１９６２年。バイオリニストとして室内管弦楽団結成を夢見るフローレンスと、歴史学者を目指すエドワード。ふたりは偶然に出会い、たちまち恋に落ちる。
　家庭環境の違いなど様々な困難を乗り越えながら交際を重ね、大学卒業後、程なく結婚にこぎ着ける。
　結婚式の後、チェジル・ビーチの傍らに建つホテルの部屋に戻ったふたりは……

　これは現代風に言えば、“成田離婚”のような話。愛し合っていた筈のふたりが、結婚式の後、僅か６時間で破局を迎えるまでを、ふたりの回想を交えて描きます。
　真面目過ぎるフローレンスと、短気なエドワード……そんなふたりの不整合な部分が、セックスと言う本性を曝け出す場がぶつかり、若過ぎるふたりにはそれを受入れる事が出来なかった、と言う事、そしてそれが２人の人生を変えて行くと言う、切なくもほろ苦い物語。
　シアーシャ・ローナンは、こうした古風で生真面目な女性ははまり役で、この映画も彼女の魅力を存分に引き出したものになっています。その分、観客の気持ちはシアーシャ・ローナン演じるフローレンスに寄り添い、その結果として、エドワードにもう少しの寛容さがあれば、となってしまうのは仕方のない所でしょうか……　　

　エピローグは、失ったものの重さにエドワード自身が気づき、取り返しのつかない事を悔やむような内容ですが……原作小説にはないと言う、このエピソードがいささか冗長。
　脚本は、原作者のイアン・マーキュアン自身が手掛けているのですが、これはいささか語りすぎ、説明のし過ぎではないでしょうか？
　特に、１９７５年の場面と語りはいらなかったのではないか、と思ってしまいました。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

ドニミク・クック

　■出演

フローレンス・ポンティング　・・・　シアーシャ・ローナン

エドワード・メイヒュー　・・・　ビリー・ハウル

（その他のキャスト）
　エミリー・ワトソン　　エイドリアン・スカーボロー　　アンヌ＝マリー・ダフ　　サミュエル・ウェスト

　■コピー

一生忘れられない恋だった

　■Ｌｉｎｋ

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