インクレディブル
ファミリー

　これは、２００４年に製作されてヒットした「Ｍｒ．インクレディブル」の続編。
　「Ｍｒ．インクレディブル」は、超人が存在するが、その力を行使する事が法律で禁じられている世界の超人ヒーローを描いた意欲作で、当時、映画化不可能とされていた「ウォッチメン」の設定を頂戴したかのような内容が話題となりました。
　今回は、その「Ｍｒ．インクレディブル」の数ヶ月後から始まる、完全な続編となります。

　怪人アンダーマイナーとの戦いで街を破壊したＭｒ．インクレディブルは、世間からの大バッシングを受ける。
　折角、大目に見られていたヒーロー活動は、この事件以来完全に禁じられてしまった。
　そんな中、大富豪のウィンストン・ディヴァーが、ヒーロー活動再開に向け乗り出した。ウィンストンは、批判を受けているＭｒ．インクレディブルではなく、妻のイラスティガールを支援し、ヒーロー活動を再開させる。しかし、妻のヒーロー活動中、慣れない家事や、生まれたばかりの子供の世話をすることになったＭｒ．インクレディブルは、寝不足とストレスでフラフラ状態になって……

　前作では、能力がありながら、それを社会で活かすことが出来ない葛藤を描いていたのですが、今回は、失業して図らずして主夫となった男と、社会で活躍の場を見つけて家庭を支える妻、と言う構図で、これまた現在社会を反映したものと言えます。
　昨今、“イクメン”と言う言葉もありますが、慣れぬ育児にクタクタになっているＭｒ．インクレディブルに、己を投影してしまうお父さんも少なくなさそうです。
　ただ、前作にあった印象的なシーン――生まれてから一度も全力で走った事のないダッシュは母の「思いっ切り走っていいのよ」の言葉に力を発揮出来る喜びに溢れた笑顔を見せて弾雨の中に飛び出して行きました――が見られなかったのは物足りないですし、社会問題を反映しながらも、その踏み込みが浅いのも残念に思えました。

　前作から１４年を経ている事もあり、その感にＣＧアニメ技術は進歩。当初、人間を描くのは苦手、とされたＣＧも問題を克服しています。
　しかしながら、前作はその過渡期にあり、キャラクター造形はかなりデフォルメされたもの。そんなキャラクターに妙にリアルなディティールとテクシュチュアを与えた本作のキャラクターには違和感を感じる事がありました。

　冒頭から激しいアクションで引き込み、その後も、緩急取り混ぜ、時に笑わせ、時に盛り上げ、最後には大スペクタクルと言う構成に隙はなく、家族で安心して観られる面白く、よく出来た映画とは思いますが、だからこそ、強く訴えかけるテーマや、印象的なカットが欲しかった、と思うのは贅沢でしょうか……　　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ブラッド・バード

　■出演

ボブ／Ｍｒ．インクレディブル　・・・　クレイグ・T・ネルソン

ヘレン／イラスティガール　・・・　ホリー・ハンター

（その他のキャスト）
　サラ・ヴォーウェル　　ハック・ミルナー　　サミュエル・L・ジャクソン　　ブラッド・バード　　ソフィア・ブッシュ

　■コピー

家事！育児！世界の危機！

　■Ｌｉｎｋ

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