ウインド・リバー

　これは、「ボーダーライン」脚本のテイラー・シェリダン初監督作品。
　出演は、ジェレミー・レナーにエリザベス・オルセンと言う、「アベンジャーズ」出演俳優コンビです。

　ワイオミング州ウインド・リバーの先住民居留地で、野生生物局職員のハンター、コリーは、雪原で少女の遺体を発見。
　何処からか逃げ出したと思しき少女の遺体にはレイプの痕跡があり、コリーは何らかの事件に巻き込まれたもの、として警察に通報する。
　だが、地元警察は動けず、ＦＢＩの出動を要請するが、ＦＢＩの新人捜査官のジェーンは冬装備すら持ち合わせていない有様。コリーは渋々、彼女の捜査に協力する事になるが……

　これは、テイラー・シェリダン監督が先住民居留地の差別的な状況を告発する目的で製作したもの。
　何しろ、このウインド・リバー居留地は鹿児島県程の面積なのに、警官が６人しかいない有様。しかも、その地元警察には、居留地内での捜査権限は与えられていません。居留地は連邦直轄となっているので州政府は関与出来ず、連邦警察であるＦＢＩに出動して貰わないとならず、しかも、ＦＢＩは連邦法により殺人など第一級犯罪にしか関われず、レイプなどの性犯罪は対象外。
　その為、先住民女性に対する性犯罪やそれに関連すると思しき行方不明などは捜査の対象にさえならず、全米の平均の数倍で発生――と言うよりも捜査対象にならないので統計すら取られていない、と言う状況なのだとか。
　そんな、目に余る地域、と言うよりも、人種格差を訴える目的で作られたこの物語――ある意味、こうした予備知識なしでは日本人には理解しがたいものかも知れません。

　ただ、そんな法律の枠外にある土地故、未だに全員が武装し、公権力に頼る前に実力で何とかしよう、と言う、殆ど西部劇の世界になっているのは、ある意味で見物でしょう。
　また、そして、そんな土地を訪れた余所者が、如何に傍若無人であるかを示すのは、これはこれで普遍性のある描写。海外や戦地で、人々がどうしてモラルから外れてしまうのか……そんな人の暗部を描くのも、心に刺さりました。
　そして、これもまたアメリカの現実なのだ、と言う点で、映画の中の光景以上に薄ら寒い思いをさせられる映画です。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

テイラー・シェリダン

　■出演

コリー・ランバート　・・・　ジェレミー・レナー

ジェーン・バナー　・・・　エリザベス・オルセン

（その他のキャスト）
　ジョン・バーンサル　　ギル・バーミンガム　　ケルシー・アスビル　　グラハム・グリーン

　■コピー

なぜ、この土地では
少女ばかりが殺されるのか――

　■Ｌｉｎｋ

http://wind-river.jp/

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