私の人生なのに

　これは、清智英と東きゆうによる同題小説を原桂之介監督が映画化した青春音楽ドラマ。

　将来を期待されていた新体操のスター選手・金城瑞穂は、練習中に脊髄梗塞で倒れ、下半身麻痺となってしまう。
　絶望と孤独に苛まれ、ひとり塞ぎ込む瑞穂だったが、数年振りにストリートミュージシャンとなった幼なじみの淳之介と再会。半ば強引に淳之介に一緒に歌おうと誘われたことから、徐々に音楽に惹かれていく……

　主演は、韓国アイドルグループ「ＫＡＲＡ」のメンバーであった知英。彼女、生まれも育ちも韓国なのに、日本語も流暢で、日本人設定に違和感はありません。元々歌って踊るアイドルグループ出身だけに、冒頭で見せる新体操演技、後半の歌唱シーンも様になっており、その芸達者ぶりには感心しました。

　映画の方は、これは事実上、そんな知英のアイドル映画のような作りで、彼女中心の描写が物語のバランスを崩している感があるのが気になりました。
　この物語、突然の下半身不随により、絶望して自死さえ考えた彼女を、献身的に支え、生きる希望を取り戻させた家族や、淳之介を始めとする周囲の人々であるのに、知英演じる瑞穂中心で描くが故に、この周囲の人々の苦悩や葛藤が描写されず、意外にもあっさりと瑞穂が立ち直ってしまったように思えてしまうのには、違和感がありました――まぁ、これも伏線になっていると言えばそうなのですが。
　また、この映画、突然のクルマ椅子生活になってしまった瑞穂が直面する、日常の些細な困りごとを見せ、車椅子生活者にとっては、思わぬ事が支障となってしまう事を教えてくれる、と言うのにも好印象。ただ、こちらも踏み込みが浅く、しかも、奇麗にまとめ過ぎてる感もありますが……
　そんなバランスの悪さや、物足りなさを感じさせるこの映画ですが、これ、青春ものであると共に、音楽ものであるのがポイント。
　終盤に至って映画における“音楽の魔法”をフル活用。クライマックスとなる公園でのライブの瑞穂の歌で、強引に感動を生み出し、泣かせる展開に持って行ってしまうのは、さすがにずるい、と思いました。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

原桂之介

　■出演

金城瑞穂　・・・　知英

柏原淳之介　・・・　稲葉友

（その他のキャスト）
　落合モトキ　　蜷川みほ　　江田友莉亜　　深沢敦　　野中隆光　　飯田孝男　　根岸季衣
　��橋洋　　赤間麻里子

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