未来のミライ

　これは、「サマー・ウォーズ」以降、夏の日本映画に、３年に１度やってくる風物詩となりつつある細田守の新作アニメ映画。

　４歳の男の子くんちゃんの家に、生まれたばかりの妹を連れてお父さんとお母さんが帰ってくる。
　それまで独占していた両親の愛情を妹にすっかり奪われてしまったくんちゃんは、駄々をこねてみたり、妹にちょっかいをだしてみたり――そんなある日、くんちゃんは庭で不思議な出会いをする。くんちゃんの事を“お兄ちゃん”と呼ぶ、セーラー服の少女は、未来からやって来た妹のミライちゃんだった……

　幼子にとって、妹（あるいは弟）は初めて出会う他者。それまで、両親の愛情を一身に受け、思うがままに生きて来た子供が、初めて“自分の思い通りにならない存在”に出会う事で、自分ではない他者が存在することを知り、その中で自己を確立して行く……この映画は、そんなありふれたエピソードを、思いっ切りファンタジックに描きます。
　自分と言う存在が、遥か遠い過去から列なる人々の出会いと偶然の末にあること、そんな奇跡のドラマを、これから自分自身が生きて行く事……そんな、下手すると説教臭くなる物語を４歳児の目を通して描くことで受入れ易くする工夫はさすがですし、これまでの細田作品の集大成とも言える、「家族」の物語を、代々受け継がれる一族の物語としているのも、家族で観る事も多いであろう夏休み映画には相応しいもの。ただ、「おおかみこどもの雨と雪」、「バケモノの子」と続き、子育て映画もこれで三連続となり、如何に創作物として昇華されているとは言え、子育ての苦労話を１０年も続ける事には疑問も覚えます――細田監督、相当、家庭と子育てには苦戦しているんだろうなぁ、と思ってしまったりもしました。

　くんちゃんを演じた上白石萌歌の声がどうにも幼児の声に聞こえない（もっとも、予告編で観た時の違和感は本編では薄れていましたが）とか、舞台となるくんちゃんの家の特異な構造が決して有効に使われていないなど、映画として疑問を感じる部分も散見されると共に、ファンタジーとしても見せ場に乏しく、細田守ならではの部分を感じさせてくれたのは、終盤の幻想の駅舎での展開くらい。３年ぶりの新作に期待膨らませたせいもあって、ちょっと残念な映画となっていました。　
　

　（２０１８年　７月２１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■原作・監督・脚本

細田守

　■出演

くんちゃん　・・・　上白石萌歌

ミライちゃん　・・・　黒木華

（その他のキャスト）
　星野源　　麻生久美子　　吉原光夫　　宮崎美子　　役所広司　　福山雅治

　■コピー

ボクは未来に出会った。

　■Ｌｉｎｋ

http://mirai-no-mirai.jp/

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