カメラを止めるな！

　これは、本作が初の長編映画となる、上田慎一郎監督のホラー＆コメディ。
　製作費３００万円と言う低予算のインディーズ作品で、昨年には完成していたのですが、上映機会に恵まれず、今年になってからゆうばり国際ファンタスティック映画祭を始めとする国内外の映画祭で公開されて話題となり、６月公開以降、上映館のＫｓ’ｃｉｎｅｍａでは公開から連日全席全回完売が続くと言う人気ぶり。何と、大手シネコンでの全国拡大公開が決定してしまいました。これは間違いなく、今年の日本映画、最大の話題作になるでしょう。

　ゾンビ映画撮影のため、山奥にある廃墟にやってきた映画撮影クルーたち。これまでの映画評判がよくなく、進退を懸けて撮影に臨む監督の熱意は空回りし、出演者は正直ドン引きだ。
　そんな撮影クルーが本物のゾンビに襲われる。次々とクルーの面々はゾンビ化していくが、監督は撮影を中止するどころか嬉々として撮影を続行し――

　これもまた「映画を作る」話。
　もの作りの映画には面白いものは多く、それが、映画ファンならば誰しも関心のある映画の舞台裏を映す、となれば傑作になる可能性の高いジャンルですが、コレはスゴい。
　冒頭３７分の劇中内映画、「ワンカット・オブ・ザ・デッド」は失笑を促す出来で、「こりゃダメだ」と思わせておいて、時間軸を巻き戻す。
　企画が立ち上がり、映画作りの行程と、その中での様々なドタバタを描き、圧巻は「ワンカット・オブ・ザ・デッド」を作り上げるラスト３０分。
　それまでの経緯と合わせて、このシーンがどうしてこうなったのかを見せるのはまるでパズルのピースが嵌まって行くかのような快感がありますし、現場でのスタッフの悪銭苦闘は爆笑の連続。
　そんな中にも、監督の作品を作り上げようとする熱意、その姿に、思わず父を後押ししようとする娘の努力も重ねて描き、最後はスタッフ＆俳優の総力を結集、親子愛が実現をさせた、正に渾身のラストショット――これには笑いがこみ上げると共に、思わず感動の涙まで出て来ます。
　映画を撮る姿を映し出す映画の、更にメイキング映像からなるエンドロール画像は、いわば“三重入れ子”で、ここもまた気が抜けません。
　全てが終わり明るくなった劇場内では、（それまで、まだ何かあるんじゃないか、と皆、息を詰めて見守っていた）あらためて笑いが巻き起こると共に拍手が沸き起こりました……これ、海外の映画祭ならスタンディングオーベーションものでしょう。
　
　コイツは面白い、なるほど、コレは映画ファンなら必見。
　これは、今年、見逃してはならない映画だと思います。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

上田慎一郎

　■出演

日暮隆之　・・・　濱津隆之
日暮晴美　・・・　しゅはまはるみ
日暮真央　・・・　真魚

（その他のキャスト）
　長屋和彰　　細井学　　市原洋　　山崎俊太郎　　大沢真一郎　　竹原芳子　　吉田美紀　　合田純奈
　浅森咲希奈　　秋山ゆずき　　山口友和　　藤村拓矢　　イワゴウサトシ　　高橋恭子　　生見司織

　■コピー

最後まで席を立つな。この映画は二度はじまる。

　■Ｌｉｎｋ

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