これは大山淳子の同題小説を、犬道一心監督が実写映画化したもの。
　沢尻エリカ演じる元アイドルのアラサー女性が新たな一歩を踏み出すまでのドラマを、猫との交流を通して描きます。

　アラサーの元アイドル、沙織は小さな町のスーパーで働いている。
　孤独な彼女が唯一心を許すのは、スーパーの倉庫で密かに飼っているロシアンブルーの猫、良男だけだった。
　日々の出来事や悩みを打ち明ける沙織につき合ううち、良男は自分を人間で、沙織の恋人だと思い込むようになる。
　そんなある日、沙織の前に“ゴッホ”と呼ばれる売れない画家の男が現われて……　

　この映画の特色としては、猫を擬人化、映画も屋外のシーンなど一部を除き、舞台劇を撮影したような演出となっている事。
　ただ、舞台劇のような演出は、却って切実でありがちなヒロインの悩みの現実味を削ぐ感じで、どうにも乗れず――ここはむしろ、舞台劇風演出シーンは猫が擬人化するシーンに止め、沙織の現実はあくまでリアルに演出した方がよかったのではないでしょうか？
　物語の方も、クライマックスとなる、沙織がゴッホに想いをぶつけるシーンで、何故、彼女のことをゴッホが知っているのか、とか腑に落ちない箇所が多く、肝心のテーマを浮かび上がらせないのももどかしい。

　沢尻エリカは、なかなかのハマリ役。良男役は吉沢亮ですが、この男の媚態に胸をときめかせる女子がいるのかどうか……まぁ、いるんでしょうけど。

　過去と幻想に囚われていた沙織が開放され、ありのままの自分を認める、それをゴッホの絵のヌードモデルとなる事で表現した辺りなど、見応えのあるシーンもあり、映画後味は決して悪くないのですが……この内容であれば、あまり奇をてらわず、素直に見せてくれてもよかったのではないでしょうか。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

犬道一心

　■出演

大石沙織　・・・　沢尻エリカ

良男　・・・　吉沢亮

後藤保（ゴッホ）　・・・　峯田和伸

（その他のキャスト）
　コムアイ　　岩松了　　藤村忠寿　　内田健司　　久場雄太　　今井久美子　　小林涼子　　林田岬優
　木下愛華　　蒔田彩珠　　伊藤ゆみ　　佐藤乃莉　　末永百合恵　　柿澤勇人

　■コピー

自分を人間だと思い込む猫が、彼女に
恋をした・・・

　■Ｌｉｎｋ

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