ＯＶＥＲ　ＤＲＩＶＥ　
オーバードライブ

　これは、ラリー選手権に挑む兄弟の姿を描くカーアクション映画。
　日本で、ラリーが人気のモータースポーツになり、公道ＳＳを含むラリー選手権が開催されていたら、と言うＩｆに基づくドラマとなっています。
　監督は、「海猿」シリーズの羽住英一郎。

　ラリー人気が盛り上がる中、世界ラリー選手権（ＷＲＣ）の登竜門として若いドライバーが鎬を削る日本選手権では、スピカレーシングファクトリーとライバルチームが熾烈な優勝争いを繰り広げていた。
　スピカには、勝ち気な天才ドライバーの檜山直純と、その兄で、メカニックの檜山篤洋の檜山兄弟がいた。
　そこへ、直純のマネジメント担当として遠藤ひかるがやって来る。やがて、ひかるは檜山兄弟の確執に秘められた過去を知って……

　この映画、実際のラリー競技の映像を多用、それを大スクリーンで観るだけでも迫力があります。しかもＶＦＸにより、架空の日本の公道でのラリー競技を描いているのです。その中でも、首都高・都心環状線をＳＳにする、と言う映像は凄い迫力。コンクリート側壁に囲まれた首都高で、側壁を正面に見るドリフト走行のオンボードカメラ映像など、「あり得ない」シーンには思わず鳥肌が立ちました。

　物語は、檜山兄弟と思い人であった少女の死がきっかけになって壊れた兄弟の絆を取り戻す、と言うドラマを、ラリー選手権制覇と重ねて描くもの。直純の「走る」理由が、思い人に振り向いて貰う為とする陳腐なドラマには本当に失望しました――ただ、「走る」事、「スピード」を求める事に、そんな理由など要らない……ただ、走りたいから走る、と言う事を判っていない、と言うのにはがっかりです。
　ただ、最終戦でのコースアウトし水没したクルマを、子供の頃のように「すぐ直してやる」と言う兄、そして、負傷しながらも「兄貴がクルマ直したんなら、オレは走るんだよ」と言う弟の兄弟の絆の復活には思わず涙が出ました。 男が見たいのは、恋愛などではなく、こうした熱いドラマなのです。
　（尚、水没車の復活についてはＷＲＣで実例があるので不可能ではありません）
　惜しいのは、ここで兄弟の絆の再生を描くのであれば、エピローグは、来シーズンＷＲＣに挑戦する弟が、兄をＷＲＣにも連れていかないといけないでしょう。
　「兄貴がＯＫを出したらオレはどんなクルマでも走る、兄貴が見てくれないクルマには乗らない」
　と言えば、連れて行けるでしょうから……

　カーアクションとして見応えはあるものの、走っているのはヴィッツ（欧州ではヤリス）などのコンパクトカーで、（中身はともかく）見た目の派手さはなく、物語については正直がっかり……そんな事もあってか、封切り日だと言うのに劇場はガラガラでした。
　確かに、今時、カーアクション映画などやっても流行らないだろうし、モータースポーツが人気になるのも映画内のように架空でしかない……そんな寂しさを感じてしまいました。
　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

羽住英一郎

　■出演

檜山篤洋　・・・　東出昌大
檜山直純　・・・　新田真剣佑

遠藤ひかる　・・・　森川葵

（その他のキャスト）
　北村匠海　　町田啓太　　吉田鋼太郎

　■コピー

信じて駆けろ

　■Ｌｉｎｋ

http://overdrive-movie.jp/

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