これは、劇場版「名探偵コナン」の第２２作目。
　本作は本編コミックでも人気のサイドキャラクター、公安警察の降谷零こと安室透にスポットを当てた映画となっています。

　東京サミット開催直前、会場に予定されていた東京湾の複合リゾート施設「エッジ・オブ・オーシャン」で大規模な爆発が起きる。施設はサミットに向けた公安警察による検査中であり、警官数名が死傷した。
　爆発はガス漏れによる事故と思われたが、現場から毛利小五郎の指紋が発見され、小五郎は爆破事件の容疑者として逮捕されてしまう。
　コナンは公安警察の対応に不信感を覚え、事件の背景を探ろうとするが……

　劇場版コナンは、好敵手である怪盗キッドと対峙する娯楽色の強いものと、サイドキャラクターを活躍させる人間ドラマ的なものが交互に製作されますが、これはその後者のパターン。
　映画は、冒頭にいきなり「エッジ・オブ・オーシャン」爆破を描き、その後、警察の捜査と、小五郎の逮捕、裁判に向かうプロセスの描写と続き、本格犯罪サスペンス劇ばりの雰囲気と展開を見せて、これは、本来の対象である子供たちを置き去りにしているのでは？……とも危惧しましたが、劇場版「コナン」、回を追う毎にファン層の年齢も上昇し、今や２０代が中心と言う事ですから、これでもいいのでしょうか。（試写会には「第１作目から観てます」と言うファンも少なくないそうな）

　物語としては、公安と検察との軋轢が原因となった、私怨による犯行……と言うものなのですが、その動機に対してやる事がいささか派手に過ぎると共に、ご都合主義的なのは、大人となっているファンを白けさせる事になるのではないか？と言う逆の危惧も感じてしまいました。
　また、物語のクライマックスとなる危機は惑星間探査機のハッキングにより回収容器を人口密集地域に落下させると言うもので……これは「サマー・ウォーズ」そのまま（と言うことは「ぼくらのウォーゲーム」の踏襲）で、これはさすがに如何なものか、と。
　そのクライシス回避を２段重ねにするのもくどく、最後のアクションなどは荒唐無稽を通り過ぎていて呆れるばかり。
　確かに劇場版「コナン」は、スケールの大きな派手なアクションを売りにしていますが、これはさすがに白けてしまいました。

　本作は、安室透を活躍させる狙いがあり、予告編では安室が黒幕かのように臭わせるような事までして、安室とコナンの対峙ムードを煽っているのですが……ちょっと考えれば本編でも人気、しかも安室透などと言う名前のキャラクターが悪に転ぶ訳もない事も判る訳で、これはさすがにやり過ぎ。１本の劇場版映画としては、どうにもバランスの悪い印象でした。
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

立川譲

　■出演

　江戸川コナン　・・・　高山みなみ

　毛利蘭　・・・　山崎和佳奈

　安室透　・・・　古谷徹

（その他のキャスト）
　小山力也　　山口勝平　　緒方賢一　　林原めぐみ　　岩居由希子　　大谷育江　　高木渉　　松井菜桜子　　茶風林
　井上和彦　　湯屋敦子　　千葉一伸　　高島雅羅　　百々麻子　　榎本充希子　　飛田展男　　岸野幸正　　川島得愛
　冨永みーな　　諸國沙代子　　上戸彩　　博多大吉

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