今夜、ロマンス劇場で

　これは、映画監督を目指す青年と、映画の中から飛び出したお姫様の純愛を描くラブストーリー。
　監督は、「テルマエ・ロマエ」の竹内英樹。脚本は、「信長協奏曲」の宇山佳佑によるオリジナルです。

　昭和３０年代、映画会社、京映で助監督と言う名の下働きをしながら映画監督を目指す健司は、町の映画館「ロマンス劇場」で発掘した戦前の古い映画に夢中。映画の中のお姫様・美雪が彼の憧れの人だった。
　ある晩、その映画フィルムが売却される事を知った健司が、最後の１回と心に決めて観ていると、突然の落雷で劇場が停電に。そして、再び灯りが点いた時、健司の前にいたのは美雪だった。
　モノクロの映画世界から飛び出した美雪に健司はあらためて恋をするが、その一方で京映の社長令嬢、塔子も健司に想いを寄せており……

　映画主演は綾瀬はるかと坂口健太郎。トップ女優と売り出し中の若手と言う立場は映画内の力関係に近いものがありますし、天然の綾瀬はるかは、この位浮き世離れしていた方がむしろお似合い。健司が撮影所から拝借した衣装、と言う設定で、昭和の様々なファッションを見せる綾瀬はるかの姿も眼福です。
　舞台となる京都・太秦をモデルにした撮影所の様子や、大物スターを演じた北村一輝も面白い。
　前半は、そんな撮影所に現われたお姫様・美雪の引き起こす騒動を描いて笑わせ、そして、中盤以降は、美雪と健司の究極のプラトニックラブに、塔子を絡ませる泣かせる恋愛ドラマに転換と、まるで韓国映画のような展開を見せて行きます。
　
　そして描かれる美雪と健司の恋……それは、映画に恋した青年に”映画”もまた恋をする、と言う、映画ファンにとって正に夢のような、映画とファンとの相思相愛。これにはやられました。
　美雪と健司、すれ違っていた想いがひとつになり、そして「最後に一度だけ抱きしめて」の台詞には、思わず落涙――の展開だったのですが、水を差された気分になったのは、その後の展開。
　石橋杏奈演じる（これが、彼女には不釣り合いな程の蓮っ葉な女なのです）ナースの騒々しさと、その後の展開はちょっと残念。
　それでやや白けてしまい、感動的にもなるであろうラストシーンも、「『タイタニック』のパクリじゃないか」と醒めた目で見る事になってしまいました。

　映画ファンと映画の恋愛、と言うアイデアに、そして現在、銀幕のお姫様を演じるに最も相応しい綾瀬はるかを起用、とここまではばっちりだったせいもあり、ちょっと詰めを誤ったのではないか、と言うもどかしさと、あと一息なのに、と言う勿体なさを感じてしまいました。
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

武内英樹

　■出演

美雪　・・・　綾瀬はるか

牧野健司　・・・　坂口健太郎

成瀬塔子　・・・　本田翼

（その他のキャスト）
　北村一輝　　中尾明慶　　石橋杏奈　　西岡徳馬　　柄本明　　加藤剛

　■コピー

運命なんて飛び越えて、私はあなたに逢いにいく。

　■Ｌｉｎｋ

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