悪女
ＡＫＵＪＯ

　これは、スタントマン出身の監督、チョン・ピョンギルが自ら製作・監督・脚本・アクション演出を務めて作り上げた壮絶なバイオレンス・アクション。
　昨年上映されたカンヌ映画祭で話題となり、日本でも公開される事になりました。
　主演は「高地戦」のキム・オクビン。

　強盗事件により父を殺され、孤児となったスクヒは、彼女を救い出し、暗殺者として育てた犯罪組織の男、ジュンサンにいつしか恋するようになる。
　成人したスクヒはジュンサンと結ばれるが、結婚式の直後、ジュンサンは対立組織により惨殺……仇を討つ為に単身乗り込んだスクヒは犯罪組織を壊滅させるが、その直後、警察に拘束されてしまう。
　そんなスクヒの能力に着目した韓国情報院のクォン部長は政府の暗殺者とすべく彼女を訓練して……

　映画は冒頭、犯罪組織のアジトに単身乗り込んで殺しまくるスクヒの無双っぷりを「ハードコア」ばりのＰＯＶ（主観映像）、しかも「バードマン」のような疑似ワンカットにより怒濤の勢いで描いて観客を圧倒。
　その後は「レオン」と言うか「ニキータ」のような展開となって行きます。
　「ジョン・ウィック」のような至近距離でのガンアクション、バイクチェイスに、バスの車内で手斧振り回すアクションと、どうやって撮ったんだ!?と思わせるシーン多数。カメラの視点は、ＰＯＶか、そうでなくとも近接格闘の間合いの中に入り、その臨場感と迫力も凄いし、その疾走感、スピード感も特筆すべきもの。
　視点が近い上に動きが速いので時に何を写しているのか判らなくなる時があるのはネックですが、とにかく、そのアクションは凄まじい。
　そのアクション撮影は映画撮影７ヶ月のうち６ヶ月にも及び、主演のキム・オクビンは３ヶ月のトレーニングを経て、登場シーンの９割でスタントマンを使わず自身で演じたのだとか……
　韓国映画らしく、流血は多く、人体破壊を露に見せるえげつなさもあるので、観客を選ぶ部分はありますが、これはアクション映画好きならば一見の価値ありと想います。

　物語は、そのアクションを見せる為に存在するようなものですが、過去と現在を行き来しながらスクヒの人生を描いて行く構成はなかなか凝っています。しかも、情報院で働くようになったスクヒは整形手術を受けて印象が変わっている為、回想シーンがはっきりと判るようになっているなどの工夫もあって判り易いのはいい所。
　ただ、女性ウケを狙ったような甘ったるい恋愛シーンは余計にも思えますし、ジュンサンの想いや、スクヒの死の理由などがはっきり判らない、物語の粗さも気になる所です。

　ラストシーンは、プロローグに繋げた見事なものではありますが、タイトルの「悪女」の意味が、スクヒが悪女になる物語、と言う事であるならば、クォン部長の後を継いで暗殺者を率いる冷酷な悪女となったスクヒを見せて欲しかったようにも思いました。

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

チョン・ピョンギル

　■出演

スクヒ　・・・　キム・オクビン

ジュンサン　・・・　シン・ハギュン

クオン部長　・・・　キム・ソヒョン

（その他のキャスト）
　ソンジュン

　■コピー

悪いのは、私か、運命か。

　■Ｌｉｎｋ

http://akujo-movie.jp/

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