ルイの９番目の人生

　これは、リズ・ジェンセンの小説「ルイの９番目の命」を、「ホーンズ　容疑者と告白の角」のアレクサンドル・アジャが映画化したもの。

　９歳になる聡明な少年、ルイ・ドラッグス。彼の短い人生は、呪われているかのようであった。逆子で生まれ、０歳でベビーベッドに照明が落下して全身骨折、５歳で感電、８歳では食中毒と、毎年１回は事故に遭いって生死の境を彷徨って来た。
　そんなルイは９歳の誕生日に海辺の崖から転落、意識不明の昏睡状態に陥ってしまう。担当医のパスカルが様々な手を尽くす中、ルイの周辺には不可解な出来事が次々に起きて……

　これは、ファンタジック＆オカルティックと見せかけて、その実は人間心理を突いたミステリー、と言う映画。
　基本的には、ルイに降りかかる災難の謎を解く、と言うのが物語の軸になのですが、物語の語り手がルイであったり、また幻想の怪物が登場、それと会話をしたりする、ファンタジックな演出もされており、なんともつかみ所のない感じ。
　狙いとしては「怪物はささやく」のように、少年が、その心が生み出した怪物との対話により成長し、行き詰まっていた状況を変える、と言うような所ではなかったか、と思うのですが、結果としてはあまり上手く行ってない印象を受けました。

　映画主演は、ルイの母親ナタリーを演じたサラ・ガトンで、この映画では、デビュー当時に持っていた人形のように整った美女、と言う風情を見せています。その美貌が、出来過ぎにも感じるオチの伏線になっているのもまた見事。
　しかし、映画の中で一番の存在感を見せているのは、やはりルイを演じたエイダン・ロングワースで、その子供らしからぬ落ち着きと、諦観を湛えたクールな瞳が映画の雰囲気を生み出しています。

　なかなか見事なオチは、ルイの出生によるもので、それ故に深まった母子の絆、そして、そんな母の期待にも応えようとしてしまう子供の健気さには複雑な思いをさせられました。
　その後のエピローグでもう一捻りを見せた辺りも含めた予想を覆す展開と、それを裏打ちする人間心理への洞察……物語としてはよく出来ていると思うだけに、なんともよく判らない印象を与える映画になっているのが残念です。　
　

　（２０１８年　１月２０日　新宿ピカデリーにて）

（作品データ）

　■監督

アレクサンドル・アジャ

　■出演

ルイ・ドラックス　・・・　エイダン・ロングワース

ナタリー・ドラックス　・・・　サラ・ガドン

アラン・パスカル　・・・　ジェイミー・ドーナン

（その他のキャスト）
　オリヴァー・プラット　　アーロン・ポール　　

　■コピー

９年間で９度死にかけた少年

　■Ｌｉｎｋ

http://louis9.jp/

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