これは、２０１５年、中国国内だけで１９３億円を売り上げ、中国製作アニメで歴代１位の興行成績を記録した３ＤＣＧアニメ。
　「西遊記」を大胆に脚色した、中華ファンタジーな物語です。

　征天大聖を名乗る猿の王・孫悟空が、天界で大暴れした挙げ句に、お釈迦様によって五行山に封じられてから５００年……孤児の小僧、リューアーは妖怪に襲われていた赤ん坊を助けて逃げ回るうちに五行山に迷い込み、孫悟空を目覚めさせてしまう。
　だが、悟空の力は封じられたままであり、ただの猿と化した悟空はすっかり自信を喪失していた。
　とりあえず、リューアーと赤ん坊を都に送り届ける事にした悟空だが……

　この映画、最近、中国で量産されている「西遊記」を元にしたファンタジー映画のひとつ。
　アニメと言う事で対象年齢を下げたのでしょうか、主人公のリューアーは年端もいかぬ小僧であり、流血やお色気シーンも削られた、ファミリー向けの体裁をとっています。
　物語は５００年間封じ込められて力と自信を失った悟空が、リューアーと過ごすうちに自信を取り戻し、やがて、その力をリューアーの為に使う事で征天大聖として蘇えるまでを描く単純な物語なのですが……これが穴だらけ、と言うのには首を傾げるばかり。なにしろ、リューアーを疎ましがっていた悟空が、何故、行動を共にするようになるのか、そして、リューアーの為に命を懸けるようになるのか、と言う、物語の要点、それを描けていないのですから。

　しかし、アニメーションとしてはなかなか見応えあり。
　切り絵のような天界の戦いは印象的ですし、森の植生などの描写は、リアルで美しく、シーンによってはあの「アバター」に匹敵するのでは、と思わせます。また、白龍の繊細なディティールと滑らかな動きには感心しました。
　アクションシーンも、カンフーの動きを基本に、アニメならではのダイナミック、かつスピーディーな描写でなかなか見せます。
　キャラクターも手慣れた感じで、特に、長身でニヒルな孫悟空のキャラクターは新鮮でした。

　まだ天竺への旅は始まってもいませんし、八戒は出て来ましたが沙悟浄はこれから、と言うまだほんのプロローグ、と言う内容ですが、しっかり稼いで掴みは十分。
　次回作では、リューアーは三蔵法師となり、いよいよ「西遊記」の物語が始まる訳ですが……そもそも日本で公開されるのか、と言う所を含めてどうなる事やら。　　　
　

　（２０１８年　１月１７日　イオンシネマみなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

ティエン・シャオポン

　■出演（日本語吹き替え版）

孫悟空　・・・　咲野俊介

リューアー　・・・　羽村仁成

（その他のキャスト）
　子安武人　　麦人　　遠藤純一　　園崎未恵

　■コピー

守りたいものがあれば、強くなれる。

　■Ｌｉｎｋ

http://saiyuki-movie.jp/

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