これは、「キック・アス」のマシュー・ヴォーンによる痛快スパイアクションの続編。
　「００７」シリーズが、「タキシードを着たスパイなんて」と批判され、どんどんリアル志向を強めて行く中で、ならば、とばかりに英国紳士の身なりのスパイが活躍する物語を作って大ヒットした、２０１４年公開の「キングスマン」の続編となる本作は、カウボーイスタイルのアメリカのスパイ組織と共闘する、と言うものになっています。

　サヴィル・ロウに店を構える紳士服店「キングスマン」……その真の姿は国際スパイ機関だ。
　そんなキングスマンのエージェントのエグジーは、ある日、謎の敵に襲撃される。何とか撃退したエグジーだが、その翌日、キングスマンの拠点が次々に攻撃され壊滅。残されたのは、エグジーと、指導教官のマーリンの２人だけになってしまう。
　エグジーは最終手段として、スパイ組織“ステイツマン”に共闘を申し入れる為、アメリカに飛ぶ。そこで、エグジーらは、キングスマンを襲撃したのは、国際麻薬組織、ゴールデン・サークルだと突き止めて……

　前作の世界的ヒットを受け、本作は更にスケールアップ。アクションも派手に、ガジェットもてんこ盛り、キャストも豪華、悪ノリに近い部分が多いとは言え、笑える場面も多くあります。
　今回、キングスマンが壊滅、アメリカの同業者と共に戦うのですが、こちらはケンタッキーに本拠地があるバーボンウィスキー酒造会社が表の顔で、全員、カウボーイスタイルで決めていると言うのも楽しい。
　もっとも、英国貴族の血を引く生粋の英国人のマシュー・ヴォーンらしく、「これはあくまで英国人の見たアメリカ人像だからね」と釘を差す事を忘れない辺り、頭がよくて教養がある人間のジョークには嫌らしさも感じてしまいますが……
　アクションは冒頭からいきなりの派手なもので、目がついていかない程にめまぐるしく、アクロバティックな格闘シーンもマシュー・ヴォーンならでは。また、様々なアイテムを駆使する辺りも楽しく見られます。ただ、エグい人体破壊シーンも多くあり、こちらは好き嫌いが分れる所でしょうか。
　物語の方も、エグジーのビルディングスストーリーであった前作に対し、スパイものとしてスケールアップしたのはよいのですけど、同時並行にドラマが進む展開を含め、全体にドタバタして落ち着きがなく、映画の核となる部分がはっきりしないのが痛い……２作目にして早くもやりたい事を見失っているようで、迷走しているようにも思えました。　

　アカデミー賞俳優がずらりと並ぶ豪華キャストは確かに見物で、サイコパスな悪役を演じているジュリアン・ムーアの存在感もなかなか。
　また、前作では悪の組織に誘拐される科学者として、マーク・ハミルが出演していましたが、本作では、その役回りをエルトン・ジョンが担っており、演奏シーンどころかアクションまでこなす、と言う、その怪演っぷりも見物でしょう。
　ただ、本作の目玉でもある、ハリー復活をあそこまで事前に見せてしまうのはどうかなぁ、と思いました。

　気になったのは、キングスマンの主要メンバーを殺してしまった事。マーリンはまだしも泣かせる見せ場を作ってくれたので納得も出来ますが、呆気ないアーサーとロキシーの死はどうにも割り切れず……
　（ただ、ロキシーについては危機を察知した時にアクションを起こしているように見えたので、生き延びている可能性もありそうですが）
　本シリーズ、既に３作目までは企画されているようですが、２人だけになってしまったキングスマンがどのような立て直しを図るのかが今から気になります。　
　

　（２０１８年　１月　７日　ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

マシュー・ヴォーン

　■出演

　ゲイリー・“エグジー”。アンウィン　・・・　タロン・エガートン

　ハリー・ハート　・・・　コリン・ファース

　マーリン　・・・　マーク・ストロング

（その他のキャスト）
　ジュリアン・ムーア　　ハル・ベリー　　ジェフ・ブリッジス　　ペドロ・パスカル　　エドワード・ホルクロフト　　ソフィー・クックソン　　エルトン・ジョン
　チャニング・テイタム　　ハンナ・アルストロム　　ポッピー・デルヴィーニュ　　ブルース・グリーンウッド　　エミリー・ワトソン　　マイケル・ガンボン
　ビヨーン・グラナート　　キース・アレン

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