これは、作家、清智英と脚本家、吉田恵里香合作による同題小説を桐谷美玲主演で映画化したもの。
　監督は「植物図鑑」の三木康一郎。

　宝石美輝は東大首席の才媛。極端な自意識過剰の自信家の上に性格が悪い。そんな彼女は、ミスキャンパス１位に輝いたのをきっかけに、有力政治家の御曹司である斎藤裕雅と交際。理想の恋人を得た、と有頂天になるが、１年後にこっぴどく振られてしまう。
　金も権力もある政治家の御曹司を見返す為には総理大臣になるしかない、とリベンジを誓った美輝は、総理大臣を目指して如月凪子主催の政治塾に乗り込む。
　その真っ直ぐさを如月は気に入り、敏腕スタッフの門脇をつけて、美輝を国政選挙に出馬させようとするが……

　この映画、基本ラブコメであるのは承知していましたが、それが、政治と選挙戦を舞台にする、と言う異色の設定に興味を引かれて観る事にしました。
　確かに、そのアイデアは悪くないのですが、この映画、「ラブコメ」設定に縛られて、あれこれ無理が出てしまっている上に、ラブコメとしてもいまいち、と言う残念な結果になってしまいました。
　まず、ラブコメとしては、裕雅が冒頭から最低男丸出しで、揺れる恋心を描けていないのが物足りない……あれでは中盤で裕雅に呼び出されて出向く美輝が愚かに見えるだけ、恋愛サスペンスにする意味でも裕雅の本性を見せるのは終盤まで引っ張るべきでしょう。
　また、物語としてはラブコメ仕立てにしたのが設定の無理を生じさせています。とにかく、経歴の割には門脇は若過ぎ――むしろ、父と娘くらい年齢を離し、疑似親子にした方が無理ないくらいの設定で――これは無理にラブコメにせず、性格ブスの才媛の再出発くらいにした方がよかったように思います。
　実際、恋愛と選挙を重ねたクライマックスは失笑もので、投票直前の街頭演説でアレをやったら落選確実もの。それで当選とか、本当、何を考えているのか……

　映画の題材としては本当に悪くなく、選挙の基本（それこそ「地盤・看板・鞄」と言う選挙に必須のみっつのバン）から、選挙戦の舞台裏を描くのは、実態に基づいて描けば興味深いものになったでしょうし、ヒロインの妹が高校生と言う設定を活かし、選挙年齢が１８歳に引き下げられた事と若者の政治参加を盛り込んでもよかったでしょう。そうしたせっかくの題材を使い潰し、ラブコメとしても中途半端となっていては本末転倒。
　三木康一郎は、ラブコメの名手、有川浩の「植物図鑑」を残念な恋愛映画にしてしまっていますが、これもまた同様。
　ラブコメとは言え、社会人女性をヒロインに大人に見せるものを作っているのですから、もっとしっかりとした大人の観賞に堪えるようなものにして欲しい所。中高生女子向けラブコメと同じような作りでは困りますし、ガラガラの劇場が、その出来映えを示しているように思います。

　

　（２０１８年　１月４日　ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）

（作品データ）

　■監督

三木康一郎

　■出演

　宝石美輝　・・・　桐谷美玲

　門脇俊也　・・・　鈴木伸之

　斎藤裕雅　・・・　清原翔

　如月凪子　・・・　斉藤由貴

（その他のキャスト）
　馬場ふみか　　佐津川愛美　　大和田伸也　　竹内愛紗

　■コピー

運命の出会いが、二人を変えた――

　■Ｌｉｎｋ

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