これは、“ミステリーの女王”、アガザ・クリスティの名作ミステリを映画化したもの。
　監督・主演はケネス・ブラナー。

　エルサレムでの仕事を終えた名探偵エルキュール・ポアロの元にイギリスから新たな仕事が舞い込む。ポアロは、バカンスを取り止め、急遽オリエント急行でロンドンに向かう事にする。
　イスタンブールからの鉄路、雪山の峠越えの中、雪崩で立ち往生した列車の中で殺人事件が発生。
　被害者は裕福な美術商で、金品狙いの賊が侵入したとも考えられるが、裏稼業上がりの人物だけに遺恨怨恨の線も捨て難い……ポアロは、急遽犯人捜しの調査を始めるが……

　この物語、既に１９７４年に映画化されており、また、名探偵ポアロについても、多くの映像化作品があります。
　この映画は、そんなお馴染みの物語を、豪華キャスト＆豪華セットにてリメイク。
　キャストはアカデミー賞受賞の大御所ジュディ・デンチから、「スター・ウォーズ」で注目されたデイジー・リドリーなどベテランから話題の若手まで満遍なく揃え、被害者役にはジョニー・デップを配して短い出番ながら強い印象を与えています。
　しかし、インパクトがあるのは、監督も務めるケネス・ブラナーがポアロを演じる事。
　これまで、名探偵ポアロと言うと、小太りで行動的と言うよりは頭脳派、と言う印象があるのですが、本作のポアロはスマートで神経質、ちょいとしたアクションも見せたりもし、これまでのポアロ像を大胆にイメージチェンジしたものです。
　セットの方も、列車１編成と言う事もあって、こちらも豪華に仕立てられて、往年のオリエント急行での旅がどのようなものであったのかを見せており、これは見応えがありました。

　映画演出は、シェイクスピア劇の俳優＆演出家としても有名なケネス・ブラナーならではの会話劇調の演出が取り入れられ、クライマックスの謎解きの場面では、乗客らが「最後の晩餐」のように席に着く、と言ういささかケレン味のあるシーンとなっています。
　映画の見せ場は、やはり、豪華に仕立てられた舞台での豪華キャスト競演であり、その意味では、雪山を行く列車などをＣＧで見せるのは却って安っぽく見えて興ざめ。中途半端なアクションシーンも蛇足に思えました。
　また、肝心のミステリーの謎解きについては、最早古典とも言える物語だけに、インパクトに欠けるものであったのは仕方ないとしても……ポアロもまた共犯者ではないか、と言う決着には、すっきりしなかったのも事実です。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

ケネス・ブラナー

　■出演

エルキュール・ポワロ　・・・　ケネス・ブラナー

（その他のキャスト）
　ペネロペ・クルス　　ウィレム・デフォー　　ジュディ・デンチ　　ジョニー・デップ　　ジョシュ・ギャッド　　デレク・ジャコビ　　レスリー・オドムJr.
　マーワン・ケンザリ　　オリヴィア・コールマン　　ルーシー・ボーイントン　　マヌエル・ガルシア=ルルフォ　　セルゲイ・ポルーニン
　トム・ベイトマン　　ミシェル・ファイファー　　デイジー・リドリー

　■コピー

その日、一等車両は容疑者で満室でした。

　■Ｌｉｎｋ

http://www.foxmovies-jp.com/orient-movie/

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