| 鋼 | の | 錬 | 金 | 術 | 師 |
これは、累計発行部数７０００万部超えと言う荒川弘の同題の人気コミックを、「ピンポン」の曽利文彦監督が実写映画化したもの。
錬金術が存在する世界のアメストリス国に生まれ、幼い頃から錬金術師の才能を見せていたエドとアルの兄弟は、急死した母を生き返らせようと、禁断の錬金術「人体練成」を試みるが失敗……エドは右腕と左脚、アルは全身を失ってしまう。
やがて国家錬金術師となったエドは、アルの身体を取り戻すため、絶大な力を秘めているという“賢者の石”を探し求める旅を続けていた。そんな彼を人は“鋼の錬金術師”と呼んでいた――
大人気の原作ですが、コミック版の方は断片的にしか読んだ事がない状況で鑑賞。（アニメ版も未見）
そんな状況でしたが、映画は、錬金術の“等価交換の原理”などを判り易く解説、兄弟が手足と肉体を失う辺りも描かれて、難なく作品世界に入る事が出来ました。
錬金術と言う仮想科学をモチーフに、魂とは、そして生命とは何かを問う作品テーマは深淵で、魅力的なキャラクターと、ファンタジー作品としては他に余り例のない時代を元にした世界設定と、なるほどこれは人気となる筈だ、と納得もしました。
そんな人気作を、あれこれ批判も多い実写映画化すると言う事で、公開前から様々に非難されて来た本作、原作ファンからは見放されたようで、公開３日目と言うのに劇場の入りは寂しいものでしたが、映画はなかなか力の入ったもの。
ＶＦＸの完成度は高く、オールＣＧだと言うアルの造形などは実写と見紛う程で、ハリウッド作品にも比肩する出来映え。
大規模なイタリアロケを行って撮影した近代欧州風の作品世界は原作の世界観を再現したもので、確かに原作世界を見事に実写化しています……人物以外は。
そう、そうなると残念なのが、日本人俳優が原作のキャラクターを演じている事。
人外の存在であるホムンクルスのラストを演じた松雪泰子（増量をしてグラマラスなラストを実現した彼女の役作りには感服）、ハーフのディーン・フジオカは許容出来るとしても、他のキャラクターはどうにも……あの作品世界で、西欧風の名前がついた人物が日本人顔、と言うのだけで違和感があり、なまじ世界構築が見事なだけに最期まで馴染めませんでした。
ただ、それでも、山田涼介などはかなり頑張って役作りをしているのですが、ウィンリィ役の本田翼は、いつもの彼女の通常運行で……少しは役作りをして欲しい……
また、情報量の多い長編の原作（映画化されたのは前半の一部のようですが）を要約しただけに、筋運びにはどうにも不自然な所があり、黒幕が見え見えだったり、クライマックス前で、ホムンクルス一行がネタバレ解説するのはどうにかして欲しかった所。また、そのクライマックスでの一つ目ホムンクルスの大群阻止は、もう少しサスペンスを盛り上げ、ホークアイの見せ場を作ってもよかったのではないか、と……
コミックの実写化作品としては悪くない出来だけに、オール日本人のキャストが惜しい……この映画、ワーナーブラザーズが製作しているのですから、それこそ、西欧の俳優を起用して作品世界を再現したら、それこそ世界に出せるものになったのでは、と思ってしまいました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
曽利文彦
■出演
エドワード・エルリック ・・・ 山田涼介
アルフォンス・エルリック ・・・ 水石亜飛夢
ウィンリィ・ロックベル ・・・ 本田翼
ロイ・マスタング ・・・ ディーン・フジオカ
リザ・ホークアイ ・・・ 蓮佛美沙子
ラスト ・・・ 松雪泰子
（その他のキャスト）
本郷奏多 國村隼 石丸謙二郎 原田夏希 内山信二 夏菜 大泉洋 佐藤隆太 小日向文世
■コピー
進め。兄弟の絆を懸けて。
■Ｌｉｎｋ
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