ゴッホ
〜最期の手紙〜
これは、ゴッホの絵画をモチーフに、ゴッホ風タッチの油絵の具で描かれた異色の長編アニメーション映画。
１８９１年、南仏の街アルル。
青年アルマンは、郵便配達人である父から一通の手紙を託される。それは、父の友人であり、１年ほど前に自殺した画家フィンセント・ファン・ゴッホが弟テオに宛てた最期の手紙だった。
配達されなかった手紙を届けて欲しいと言う父の願いで、渋々パリへと向かったアルマンはテオの行方を追うが……
この映画、俳優が演じた映像を元に油絵具で描いてアニメーションすると言う独特の取り組みで、長編映画としては世界初だとか。
その為に集められた画家は約１００人……勿論、全ての動きを油絵にしている訳ではなく、ＣＧのモーフィングも使っていますし、中には実写映像を画像ソフトで油絵風に変えたと思しきものもありますが、それを差し引いたとしても、これは膨大な作業量と作画を必要とした筈です。
確かに、そんな風に作り上げられた作品世界が他に例を見ないもので、冒頭、ゴッホの絵画の中に入っていくようなカメラアングルにはぞくり、とさせられました。
ただ、アルマンを素人探偵に、その死に迫る物語は凡庸で、移動しては話を聞く、と言う展開もやや退屈で、中盤は眠気を覚えるほどでした。
むしろ、アニメーションと言う自由な表現を活かして、ゴッホの作品世界から、更にそれを生み出した心の深層……彼の精神世界を描いて欲しかったように思いますし、油絵アニメーションも、「ここぞ」と言うシーンで効果的に使うべきだったような……
しかし、それでも映画は彼の死に迫るだけでなく、その創造と製作への想いを描き出します。
そこに在る希望の星は、この、正に前人未踏の試みに挑んだ映画を作り出したからこそ輝かせる事が出来たように思えてなりません。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
ドロタ・コビエラ／ヒュー・ウェルチマン
■出演
アルマン・ルーラン ・・・ ダグラス・ブース
（その他のキャスト）
ジェローム・フリン ロベルト・グラチーク ヘレン・マックロリー クリス・オダウド シアーシャ・ローナン
ピョートル・パムワ ジョン・セッションズ エレノア・トムリンソン エイダン・ターナー
■コピー
愛か、狂気か。
■Ｌｉｎｋ
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