| ナミヤ雑貨店の 奇蹟 |
これは、発行部数８００万部超え、と言う東野圭吾の大ベストセラーを「彼女の人生は間違いじゃない」の廣木隆一監督が映画化したもの。
この映画、予告編では敦也役の山田涼介を前面に押し出す作りとなっており、「東野圭吾史上最も泣けるドラマ」と盛り上げて、若い女性客を呼び込もうとしているようですが……物語の中心はナミヤ雑貨店の主、西田敏行演じる浪矢雄治で、作りとしてはやや古風な人情もの。確かに山田涼介は映画を背負う主役級の演技を見せてはいますが、そんな、宣伝と内容のちぐはぐさは、不発気味の人気に影響を及ぼしているような……
物語の始まりは２０１２年。
深夜の商店街を、敦也ら３人の少年が走り逃げている。どうやら窃盗犯であるらしい彼らは、あらかじめ目星をつけていた廃屋に逃げ込み、身を隠すのだった。
その廃屋――かつて、ナミヤ雑貨店の看板を掲げていたその店は店主の浪矢雄治が万事相談を受ける事で知られていた。
深夜、３人の少年は、シャッターの郵便口から手紙が落ちてくるのを見る。その手紙は、３２年前に書かれた悩み相談で……
原作の小説は感動のハートウォーミングストーリーとして大人気となったのですが、この映画版はいささか残念な出来映え。
廣木隆一監督は、ピンク映画出身、青春映画から大人の人間ドラマまで幅広い作品を手掛けて来たベテランですが、これはさすがに頂けません。
確かにタイムスリップもので、複数の時間軸を行き来しながら進める物語故、構成が複雑なのは仕方ありませんが、それにしてもこれは判り辛い。しかも、エピソードの組み立てがおかしく、舌っ足らずで説明不足の部分の目立つ脚本も悪さも、それに拍車をかける感じです。
まず、最初に手紙を受け取った時の敦也らの反応が不自然なものですし、更にターニングポイントとなる、彼らに縁のあるセリと言う歌手の歌が流れ、彼らが「セリの歌だ！」とびっくりするシーン。それまでセリと彼女の歌が映画中に登場しないので、観客は何の事なのか判らない。ここはその歌をまず出しておいて、そのルーツが３２年前にあった、と言う描写にしないと、その後の彼らの行動が納得出来ないし、その後の感動にも繋がらないでしょう。また、こうした手際の悪さが“セリの歌”の印象を弱め、メロディが心に残らないものになってしまっているのも痛い。
せっかく、主題歌に山下達郎を起用しているのですから、その歌を上手く使うくらいの工夫はあって然るべきでしょう。
また、ラストシーンもまた説明不足で、エピローグのその後の敦也らの描写にどう繋がるのかが欲しかった所です。
廣木隆一監督らしく、くどいお涙頂戴シーンがないのが救いですが、これにはどうにも乗れませんでした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
廣木隆一
■出演
浪矢雄治 ・・・ 西田敏行
敦也 ・・・ 山田涼介
セリ ・・・ 門脇麦
（その他のキャスト）
尾野真千子 村上虹郎 林遣都 成海璃子 萩原聖人 小林薫
鈴木梨央 山下リオ 手塚とおる PANTA 吉行和子
■コピー
それは手紙がつなぐ、たった一夜の優しい奇蹟
■Ｌｉｎｋ
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