| あさひなぐ |
これは、小学館漫画賞受賞のこざき亜衣による同題コミックスを「トリガール！」の英勤監督が映画化したもの。
主演はアイドルグループ乃木坂４６の西野七瀬で、他にも白石麻衣、桜井玲香ら乃木坂４６のメンバーが顔を揃えています。
二ツ坂高校に入学した、元美術部で運動音痴の東島旭は、入学式の朝、痴漢から救ってくれた先輩の宮路真春に憧れ、薙刀部に入部する事になる。
野性的な勝負勘を持ち圧倒的強さを誇る真春は２年生ながらレギュラーで、真春を大将に据えて臨んだインターハイ予選だったが、二ツ坂高校は東京都予選会で敗退してしまう。
そんな彼女らを顧問の小林先生は夏合宿へ誘うが……
この物語、タイトルからして「ちはやふる」との類似を感じさせますし、青春スポ根ものとしても、今年だけでも何本も作られているだけに、これまた類似と言うか、今更感もあります。しかし、原作コミックスのファン層である若年女性層をターゲットにするそれら作品に対し、この映画の特色は、乃木坂４６のファンを対象と据えた“アイドル映画”になっている、と言う事。映画のカットは男性誌グラビアのように彼女らを美しく撮る事を重視しており、また、“恋愛禁止”を謳うアイドルグループ方針に基づき映画中でさえ恋愛描写はなく、イケメンも出て来ません。
私生活でもおっとりとして控え目な西野七瀬を旭役に据えたのも、そうした個性を熟知しているファンを納得させるものでしょう。
（その分、旭が飛びきり小柄で、それを補う為に引き技を習得した、と言う設定が不自然になってしまいましたが）
もっとも、アイドル映画となっているのは悪い事ではなく、恋愛要素を除いた分、スポ根ものとして、これはなかなか――普通の女の子がウリのＡＫＢに対し、乃木坂４６は美女揃いで、そんな彼女らがひたむきな努力を見せるのですから、これはファンでなくとも気持ちが入るでしょう。
感動を呼ぶシーンも多く、厳しい練習から逃げ出そうとした１年生が、仲間のひたむきな頑張りに翻意するシーンを始め、熱意と努力を正当化する青春・スポ根ならではの描写には幾度も涙させられました。
気になったのは、彼女らを美しく撮ろうとする余り、厳しい練習の割に汗だくになっている描写がない事――メイク崩れ、あるいは下着が透けるのを気にしたのでしょうか？
そして、試合での勝敗を明確にして欲しかったです。（男とは勝負には煩いものなのです）
また、惜しいと思ったのが試合のシーンで、ここは特殊撮影を駆使してでも迫力のある絵が欲しかった所。（顔が隠れる防具をつけているだけに、試合シーンは体格の近い熟練者が吹き替えているのでしょうが）
多くのアニメがそうであるように、少女が武器を取って戦うシーンと言うのに男子は熱狂するもので、その戦いの内容が、他に例を見ない日本の伝統武芸ともなれば、これは海外でも評判となりそう――そんな、アイドル映画の枠を超える可能性をも感じさせてくれただけに、もう少しを望みたくなってしまいました。
（２０１７年 ９月２５日 横浜ブルク１３にて）
（作品データ）
■監督
英勤
■出演
東島旭 ・・・ 西野七瀬
宮地真春 ・・・ 白石麻衣
小林先生 ・・・ 中村倫也
（その他のキャスト）
桜井玲香 松村沙友理 伊藤万理華 富田望生 生田絵梨花 松本妃代 岡野真也
江田友莉亜 紀咲凪 北原帆夏 樋口柚子 緒方もも 宮田祐奈 松田佳央理
中田花奈 斉藤優里 吉川靖子 藤谷理子 池田夏希 加賀成一 飯野智司
森永悠希 角替和枝 江口のりこ
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