ダンケルク
これは、「インセプション」のクリストファー・ノーラン監督が初めて挑む実話もの。
第二次大戦のフランス戦でダンケルクの海岸に追い詰められた英仏兵士４０万人の脱出劇です。
１９４０年５月。フランス北部の港町ダンケルク。
ナチスドイツのフランス侵攻により始まった大陸での戦いも終盤を迎え、海岸沿いに追い詰められた英仏連合軍約４０万人の兵士たちが救助の船を待っていた。
しかし、英国での戦いを睨む英海軍は軍艦を救助に出し渋り、民間船を徴用した撤退作戦が決行されようとしていたが……
この映画、実話が元とは言え、クリストファー・ノーランらしい凝った構成。
海岸からあれやこれやの手を尽くして脱出しようとする英国陸軍の若い兵士の１週間、同胞の救援に向かう民間船の１日、撤退の上空支援に出動した空軍の戦闘機パイロットの１時間……これを同時並行に１時間46分で描くのです。
視点が切り替わる度に時間軸が変わるのですが、これが決して回想シーンなどではなく、全てがリアルタイムで進行して、それぞれのサスペンスとドラマの盛り上がりを見せ、微妙に絡み合いながらその全てが最後に１つになる、と言う離れ業には感心させられます。 さすがはクリストファー・ノーラン。
また、女っ気なし、色恋沙汰なし、最初っから最後まで戦場と言う本作の事実上のヒロインはスピットファイア――雌猫を思わせる流麗かつ、しなやかなボディ……ノーラン監督も大好きのようで、その魅力を存分に発揮させているのも素晴らしい。特に、冒頭の登場シーンは痺れます。
また、映画中に登場するものは「現物」に拘るクリストファー・ノーランらしく、戦闘機から艦船まで実物を揃え、沈没シーンでは実際に船を沈めて撮った、と言う事で、このＣＧ全盛の映画界でわざわざ現物を使い、しかも現地ロケで撮影、と言うのも見物でしょう。
ただ、海軍の駆逐艦として戦後の英海軍のフリゲイト艦を登場させているのは、と言うのは気になりました（「せめてレーダーアンテナくらいはＣＧで消しておいて欲しかった）し、ラストの燃え落ちるスピットファイアがハリボテだと判るのはどうにかして欲しかった所です。
ただ、これは判る人にしか判らない映画ではないか、と思います。説明も最小限、後はいきなり観客を戦場のど真ん中に放り込むような映画なので、予備知識はかなり必要。これはさすがに観て、面白いと思える人を選ぶような気がします。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
クリストファー・ノーラン
■出演
フィオン・ホワイトヘッド トム・グリン=カーニー ジャック・ロウデン ハリー・スタイルズ アナイリン・バーナード ジェームズ・ダーシー
バリー・コーガン ケネス・ブラナー キリアン・マーフィ マーク・ライランス トム・ハーディ
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生き抜け
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