これは、中村航による、彼の母校の人力飛行機サークルをモデルにした同題の青春小説を映画化したもの。
　監督は、「ヒロイン失格」の英勉。主演は「ｏｒａｎｇｅ」の土屋太鳳と、「帝一の國」の間宮祥太朗。

　一浪した挙げ句、何となく工科大学に入学した鳥山ゆきなは、理系のノリにカルチャーショックを受けるが、一目惚れした先輩の高橋圭に誘われ、二人乗り人力飛行機で鳥人間コンテスト出場を目指す人力飛行機サークルに入部する事になる。
　しかし、憧れの高橋先輩ではなく、ヤンキーかぶれの癖にメンタル弱い坂場先輩とコンビを組むことになったゆきなだが……

　これは、今や夏の琵琶湖の名物イベントとなった感がある日本テレビの「鳥人間コンテスト」を舞台としています。
　１９７７年に始まった「鳥人間コンテスト」は、当初は滑空機部門だけ（なので、高い台から飛び降りるスタイルになっている）でしたが、今や、人力プロペラ機が増え、その飛行能力は今や琵琶湖を横断するまでになっています。
　この映画は実際に「鳥人間コンテスト」にタンデム復座と言う異色の形式で挑んでいる芝浦工科大学の人力飛行機サークル「ＴＢＴ」をモデルにしています。
　（その芝工大は２０１６年に映画と同様、発進直後に墜落しましたが、今年は立派なフライトを見せると言う映画同様の展開を見せました）
　実物の人力飛行機や、大学におけるその製作や準備の様子などにはリアリティもありますし、土屋太鳳も実年齢に近い大学生役は違和感なく、体育大学生で筋肉質の彼女だけに、人力飛行機の漕ぎ手と言うのにも説得力があります。
　物語の方は、青春映画にありがちな、スポ根＋ラブコメ展開。
　スポ根とは言っても、ライバルとの争いが描かれる訳ではなく、ただ空を飛びたい、と言うものなのですが、そこに説得力が出てしまうのが「鳥人間」の面白さ。
　その一方で、相性が悪くいがみ合っていた男女がいつの間に……と言うと言うラブコメでお馴染みの展開はいささか凡庸に感じました。

　クライマックスは当然「鳥人間コンテスト」でのビッグフライト。
　実際の「鳥人間」の映像を使って雰囲気も十分、また、長距離を飛ぶプロペラ推進式ではフライトが長時間となって中弛みしがちなのですが、そこに告白合戦（しかも全員フラれる！）と言う爆笑展開を持って来るのも気が利いています。
　惜しかったのは、原作小説が数年前に書かれたものである故に、最後、「落とす」展開となってしまう事。既に大会規則ではＵターンしてスタート地点に戻る事が認められており、今年は遂にスタート地点に戻って来てしまったチームがあっただけに、そんな現実を超える感動を演出出来なかった映画に物足りなさを覚えてしまいました。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

英勉

　■出演

鳥山ゆきな　・・・　土屋太鳳
坂場大志　・・・　間宮祥太朗
高橋圭　・・・　高杉真宙

（その他のキャスト）
　池田エライザ　　矢本悠馬　　前原滉　　佐生雪　　ナダル
　羽鳥慎一　　轟二郎　　ひこにゃん

　■コピー

飛べ

　■Ｌｉｎｋ

http://torigirl-movie.com/

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