ザ・ウォール
これは、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のダグ・リーマン監督による戦場サバイバル・スリラー。
イラク戦争で３７名の米兵を射殺したと言われる実在のイラクの狙撃兵“ジューバ”に対峙する事になった兵士の孤独な戦いを描く映画です。
２００７年、イラク戦争末期の砂漠地帯。米陸軍狙撃兵のアイザックとマシューズは、救援要請を受けてパイプライン建設現場に駆けつけた。
だが、既に作業員と警護の兵士は全て射殺されていた。状況からすると敵の狙撃兵に撃たれたようだ。こちらからの視界を遮る崩れかけた壁の向こうに、敵の狙撃兵がまだ潜んでいる可能性もあると見て、２人は迂闊に現場に近づくことなく、身を潜めて様子を窺うが……それから２０時間近く動きはなく、しびれを切らした狙撃手のマシューズは現場に近付くが……
これは、砂漠の戦場で、唯一の遮蔽物になる壁の裏に逃げ込んだ負傷兵と、それを狙う敵の狙撃兵、と言う場所も人数も限られたワンシチュエイション・ムービー。回想シーンなども入れず、徹頭徹尾砂漠の戦場しか描かないと言うのには潔ささえ感じます。
主人公の兵士を演じるのはアーロン・テイラー＝ジョンソンですが、埃まみれで顔立ちもはっきりと判らずで、俳優の魅力にも頼れません。
そんな制約のある中、アイデアと物語だけで押し切る、という所にこの映画の面白さがあり、作り手の腕の見せ所でもあります。
物語としての工夫は、主人公を観測手として、敵の狙撃兵の対抗する武器を持たせなかった事と、敵の狙撃兵に米軍の無線機を持たせ、会話をさせる事。
その結果、映画は狙撃兵同士の銃弾によるやり取りではなく、会話劇となりました。
（このまま舞台劇に出来そうな感じです）
これはなかなか面白いアイデアで、会話劇としての面白さだけでなく、敵兵の持つ無線機が物語の大きな伏線にもなっている、と言うのには感心します。
もっとも、これだけで９０分持たせるのはさすがに厳しく、中盤で中弛みする感じがあるのが正直な所で、ここはもう一工夫欲しかったようにも思いました。
また、クライマックスとなる直接対決は意外にも呆気にないものでしたが、それに続くラストのドンデン返しと、終わりのない対テロ戦争を暗示する、いささかブラックなエンディングには唸らされました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
ダグ・リーマン
■出演
アイザック ・・・ アーロン・テイラー=ジョンソン
マシューズ ・・・ ジョン・シナ
“ジューバ” ・・・ ライト・ナクリ
■コピー
壁の向こうは、生存確率０％
■Ｌｉｎｋ
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