ワンダーウーマン

　これは、ＤＣコミックスのスーパーヒーローの中で、スーパーマン、バットマンと並び立つ存在で、ジャスティス・リーグでも中核メンバーとなる女戦士・ワンダーウーマンを描くアクション。
　この映画では、彼女の生い立ちと人間界に係わる事になった始まりを描くもので、“ワンダーウーマン・ビギニング”とでも言う内容。
　監督は、「モンスター」の女性監督、パティ・ジェンキンス。彼女は、男社会のハリウッド映画界で、女性でもビッグバジェットのブロックバスター作品を手掛けられる、と言う事を示す為に、本作の監督を熱望。「モンスター」の後、１４年をこの映画を撮る為に費やしたと言います。
　その執念が実ってか、先行して公開された本国では大ヒットとなり、女性監督映画の興行成績を軒並み塗り替えているとか……

　ゼウスにより人間界に愛と平和をもたらす為に遣わされた、女だけの種族、アマゾン族……人間界とは見えない壁で隔てられた島で暮らすアマゾン族のプリンセス・ダイアナは、小さな時からおてんばで、勉強よりも武術訓練に夢中。そうして美しく成長したダイアナだが、壁の向こうから島に漂着した男、スティーブを救い出した事で、その運命は大きく変わって行く事になる。
　スティーブの口から人間界で大きな戦争が起きている事を聞いたダイアナは、その背後に、アマゾン族の宿敵、軍神アレスがいると考えるようになる。
　アレスを斃せるのはアマゾンの戦士だけだ。ダイアナは、“神殺し”の剣を携え、スティーブと共に戦いの場へと赴くのだが……

　ワンダーウーマンことダイアナを演じるのは「ワイルド・スピード」などに出演のガル・ギャドットで、これが映画初主演となります。彼女は、２００４年のミス・イスラエルであると共に、２年間、兵役に就いていたイスラエル軍では最終的には格闘技の教官をしていた、と言う事で、強さと美しさを要求されるこの役にはうってつけ。実際、凄みさえある美貌に、長身で筋肉質の体型で、アクションも様になっています。

　物語の方は、今回はこの秋公開の「ジャスティス・リーグ」に向けての登場人物お披露目と言う内容。
　ダイアナの幼少期から描き始め、ダイアナが島を出るまでに前半の1時間を費やす、と言う構成となっているのは、もたついている、と言う印象を持つ人もいるかも知れませんが、ザック・シュナイダーの趣向により全体的にダークなＤＣコミックの映画シリーズの中で、明るく美しい島で語られる物語はなかなかないものと思え、悪い印象は受けませんでした。
　また、世界の有り様も、戦争の現実も、そして恋も知らなかった無垢なダイアナが、それらに直面して学び、成長して行くビルディングスストーリーとなっているのもいい所。
　しかし、それでも本来の見せ場はワンダーウーマンとしての活躍。
　第一次大戦、西部戦線の塹壕の中、助けを求められて放っておけなくなり、死地に赴く、その凜々しさ。銃弾をはね飛ばし、機関銃の連射を楯で受け止めて遮二無二突き進む、その姿に、スティーブら仲間と、そして見方の兵士らが「続け！」と塹壕を飛び出して行くのには心動かされますし、その後の快進撃と、救いを求められた町を奪還するまでのシークェンスは痛快なものがありました。

　パティ・ジェンキンスの演出は、思っていたよりもフェミニズムに振った感じがありませんが、それも女性ならではの描き方でしょうか。
　その一方で、意外にもコミカル、と言うかユーモアが発揮された部分が多くて楽しめます。ロンドンにやって来て、その格好じゃ人前に出られない、と服を買いに行くと、デパートでダイアナが延々２００着以上も試着を繰り返す、と言う「女の買い物」の長さを描くのもいいし、目立たない方がよい、とスティーブがダイアナに眼鏡をかけさせるのですが「眼鏡かけても美人は美人ですよ」と秘書にチクリと言われるのも女性ならではないでしょうか。
　ただ、アクションの演出については、いささか物足りない部分もあります。
　スローモーションを多用した演出には目新しさがなく、ダイアナの超人的な跳躍も、ザックならではためを作って迫力を出すのでしょうけど、その辺りがないので、如何にもなＣＧでピョンピョン跳ねているのは興を削ぎます。
　また、クライマックス、アレスとの対決もぶつかっては吹き飛ばされ、の繰り返しで芸がない……ちょっと冗長にも思えてしまいました。

　全体としては、マーベルの陽に対してＤＣの陰、と言うカラーを変えるものではありませんが、それでも最近のＤＣコミックスの実写化作品の中では上々の出来。本国での大ヒットにも納得です。
　秋公開の「ジャスティス・リーグ」で、ダイアナに再会出来るのが楽しみです。
　

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督

パティ・ジェンキンス　

　■出演

　プリンセス・ダイアナ／ワンダーウーマン　・・・　ガル・ギャドット

　スティーブ・トレヴァー　・・・　クリス・パイン

（その他のキャスト）
　コニー・ニールセン　　ロビン・ライト　　デヴィッド・シューリス　　ダニー・ヒューストン　　エレナ・アナヤ

　■コピー

美しく、ぶっ飛ばす。　

　■Ｌｉｎｋ

http://wwws.warnerbros.co.jp/wonderwoman/#/boards/wonderwoman　

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