| 心が叫びたがってるんだ |
これは、２０１５年公開の同題のアニメ映画を、「君に届け」の熊澤尚人監督が実写映画化したもの。
子供の頃、お喋りが過ぎて父母の離婚を招いた事がトラウマとなっている成瀬順は、それ以来、喋る事が出来ずにいた。
高校三年の春、順は地域ふれあい交流会の実行委員に指名される。共に指名されたのは、人付き合いの苦手な坂上拓実、肘の故障で休養中の野球部エースの田崎大樹、優等生でチアリーダー部長の仁藤菜月。
順と拓実は、担任教諭の誘導もあって、出し物としてミュージカルを演じる事を提案するが……
最近多い、マンガやアニメの実写化作品の中では、これはかなりハードルの低い部類になると思いますが、それにしてもこの映画の完成度はかなり高いと思います。
玉子の妖精、と言うファンタジー的要素は潔く切り、その一方でクライマックスとなるミュージカルは比重を高め、最後はフルコーラスを歌って、しっかり盛り上げると言う脚色もドンピシャ。ステージで見せる、歌と踊りはなかなか見事なものになっています。
ファンタジー要素を削った為に、順のトラウマと、その克服がより個人の内面的なものであるとはっきりし、描写としては生々しくなった感じですが、「言葉」の重さと、言いたい事が言えない、伝わらない苦しみ、と言う、この物語が持つテーマを、しっかりと描いていたのは好印象。
一見、最近多い少女マンガの実写化と同じような客層狙いに思えますが、良策だった原作のアニメ版に決して劣らぬ完成度と、それを実現させるに至った拘りを随所に感じるもので、原作同様、多くの人が楽しめるものになっていると思います。
また、実写化での大きな問題であるキャストも概ねイメージ通り。特に、順と拓実については全く違和感ありません。拓実を演じた中島健人の再現度は高く、順を演じた芳根京子は、童顔故に時にオバサン臭くなってしまうのが難点とは言え、仕草も演技も含め、アニメの順を忠実に再現しているのは凄い。
ただ、仁藤菜月を石井杏奈がやったのはちょっと違うかな、と――本業がＥ－Ｇｉｒｌｓのパフォーマンスだけに、ミュージカルシーンの踊りは上手過ぎるくらいなのですが――個人的には、中条あやみだったら文句なしだった所。あと、担任教諭も、イメージ的には高橋一生だったんですが。
ラストシーン、劇の終わりと共にスパっと切ったのには、あの「告って来る」がなくなってしまう、と物足りなかったのですが、エンドロール後に、しっかり告白、しかもキービジュアルの青空背景に叫ぶ４人を実現させたラストシーンには納得、でした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
熊澤尚人
■出演
成瀬順 ・・・ 芳根京子
坂上拓実 ・・・ 中島健人
仁藤菜月 ・・・ 石井杏奈
田崎大樹 ・・・ 寛一郎
（その他のキャスト）
金澤美穂 萩原みのり 西山潤 川村亮介 上川周作 森田想 尾屋葵 小平大智 桜井美南 堺小春
近藤里沙 真田真帆 小林万里子 塗木莉緒 長田侑子 亀田侑樹 吉田志織 井上拓哉 宮坂健太
岩井拳士朗 影山樹生弥 福島綱紀 河野宏紀 平原テツ 福山康平 吉田翔 渋谷龍生 川合諒
松山愛里 三田村周三 髙橋かすみ 林悟 中澤準 稲川実代子 ANXRA 俵木藤汰 荒谷清水
セレステ・イシイ 水瀬いのり 荒川良々 大塚寧々
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