| 結婚 |
これは結婚詐欺師と欺された女たちを描いた井上荒野の長編小説を、ディーン・フジオカ主演で映画化したもの。
監督は、ディーン・フジオカ出演のＮＫＨ朝ドラ「あさが来た」の演出を手掛けた西谷真一。
端正なマスクと知的でウィットに満ちた会話で女たちの心を奪う男――古海健児は結婚詐欺師だ。
妻のある身でありながら、るり子と言うかつてカモにしかけた女を相棒に、次々に女を欺していく古海だが、その心の中を支配するのは、幼い頃の記憶……その中で母は「結婚する」と幸せそうな微笑みを浮かべて、古海を海へと突き落としたのだ……
妻を持つ男の結婚詐欺、と言う内容に阿部サダヲと松たか子の「夢売るふたり」を思い出しました（そう言えば、安藤玉恵はこの映画でも欺される役でした）が、こちらの方は何とも薄味。
結婚詐欺、と言う犯罪よりも、その理由を詐欺師の男の内面に求め、その出生の謎に迫って行くのを中心に据えた物語自体はよいと思うのですが、この映画、その物語を描くのに欠かせない内面描写が希薄、登場人物の描き込みも足りずで、どうにも物足りません。また、映画中に散りばめられた数々の暗喩も少々くどい感じですし、妻の正体が概ね判ってしまうなど、分かり易さを狙ったが故に暗喩と言うよりもネタバレのヒントとなってしまっているのもどうかと思います。
結婚詐欺師ならではの女心の捉え方も説得力に欠け、これは要するに「ただし、イケメンに限る」と言う手法か、と。（実際、彼を追う探偵からも「素人に毛の生えたレベル」と言われる体たらくで……）
その一方で、殆どディーン・フジオカのイメージビデオのような長回しの描写が延々と続き、その冗長な描写には映画開始早々からイライラさせられました。
ディーン・フジオカは、この詐欺師役を好演。映画中ではピアノも披露、主題歌も担当するなど頑張っているのは判るのですが、映画の出来からすると、残念と言うしかない状況なのは少々気の毒。
また、欺される女たちの方も、魅力ある存在に描くか、あるいは存在感のある女優を配して欲しかった所です。
確かに、これは犯罪劇としてではなく、己の生き様のルーツとなる謎に迫る男の旅路を叙情たっぷりに描くもの、と見るべきでしょうし、ディーン・フジオカは華を添える演技を見せているのですが、それだけに冗長で薄っぺらいのが惜しい映画でした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
西谷真一
■出演
古海健児 ・・・ ディーン・フジオカ
柊子 ・・・ 平石るり子
古海初音 ・・・ 貫地谷しほり
（その他のキャスト）
中村映里子 松本若菜 安藤玉恵 古舘寛治 萬田久子
■コピー
「結婚しよう」――それが、彼の別れの言葉。
■Ｌｉｎｋ
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