美しい星
これは、三島由紀夫の異色ＳＦ小説を「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督が映画化したもの。
当たらない天気予報で知られるお天気キャスターの大杉重一郎は、妻の伊余子、フリーターの息子・一雄、大学生の娘・暁子と平凡な毎日を過ごしていた。
ある夜、車を運転中に光に包まれる奇妙な体験をした重一郎は、やがて自分が火星人であることに気付き、番組内で「惑星連合からのメッセージ」を伝えるようになる。
やがて、一雄と暁子もそれぞれ水星人、金星人であるとの認識を持つようになり……
主演はリリー・フランキー。今や本業が何だか判らなくなっている彼にしても、さすがに主役は厳しかったのか、いつもの絶妙な力の抜け加減が見られなかったように感じました。
あと、一雄役の亀梨和也も何故からしさがなく、キャストについての事前情報を入れていなかったせいもあり、途中まで「佐藤健？」と思っていたほど。
ただ、暁子が大学ミスコンで見せる、“周囲から浮くくらい”の美貌と存在感はさすが橋本愛、と思ってしまいました。
この映画、吉田大八監督が長年温めていたものと言う事で、東西冷戦時代に書かれた原作が核戦争による人類滅亡の危機を取り上げていたのに対し、それを地球温暖化に改変し、現代を舞台とした物語に仕立て直していた辺りはなかなか見事なアレンジと思いました。
確かに、地球温暖化と言うのは今日明日にでも人類を滅亡させるものではなく、危機感は薄れたように思いますが、それでも、“日常的にある嘘”と“信じがたい真実”を織り交ぜて描く、現実と言うものの認識、そして近代科学文明批判を盛り込んだ内容には見るべきものがあります。特に中盤の敵対する異星人との討論対決シーンは、その熱演だけでなく、内容の方もなかなかの見物でした。
ただ、内容には温め過ぎた感もあり、筋運びには独善的であったり、乱暴なものがあり、広く受け入れられるようなものになっていないように思えたのは、残念な所。
また、ラストシーンは、３人が異星人だったのか、或いは妄想であったのかを曖昧にしておいた方がよかったように思います。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
吉田大八
■出演
大杉重一郎 ・・・ リリー・フランキー
大杉伊余子 ・・・ 中嶋朋子
大杉一雄 ・・・ 亀梨和也
大杉暁子 ・・・ 橋本愛
（その他のキャスト）
佐々木蔵之介 羽場裕一 春田純一 友利恵 若葉竜也 坂口辰平 藤原季節
赤間麻里子 武藤心平 川島潤哉 板橋駿谷 樋井明日香
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