皆は
こう呼んだ、
鋼鉄ジーグ
これは１９７０年代に放送されたロボットアニメ「鋼鉄ジーグ」をモチーフにしたイタリアのヒーローもの映画。
監督は、本作がデビュー作となるガブリエーレ・マイネッティ。
ローマの下町で、窃盗やギャングの下働きでその日暮らしをするチンピラ、エンツォ。ポルノビデオ鑑賞だけが楽しみの孤独な中年男だ。
ある日、時計を盗んで追われ、飛び込んだ川で放射能の廃液を浴びたエンツォは、何とか追っ手は捲いたものの嘔吐と悪寒が止まず、帰り着いたアパートで寝込んでしまう。翌日、何とか快復したエンツォは裏稼業の先輩で何かと世話になっていた“オヤジ”の手伝いで、密輸された麻薬を受け取りに行くのだが……
これは、意外と言ったら失礼かも知れませんが、真っ当で本格的なマスクヒーローものになっています。
何しろ、この映画、描かれる内容は、殆ど「スパイダーマン」なのです。しかし、荒んだ社会を背景に、更に主人公を冴えない中年男とした事で、決してアクションだけじゃない、大人向けの物語となっています。
ＳＮＳを有効なアイテムとして活用しているのも現代的ですし、ギャングの幹部までもがＹｏｕｔｕｂｅのアクセス数に執心して、エンツォをライバル視するようになるなどの風刺も効いています。
エンツォは、偶然手にした怪力と頑強な肉体を、当初は私利私欲の為に使うのですが、“オヤジ”の娘で、「鋼鉄ジーグ」の熱狂的なファンであるアレッシアをトラブルから救い出した事で、彼女に「鋼鉄ジーグ」の主人公、司馬宙と同一視されて頼られるようになり、変化を見せて行きます。
「力」が人をヒーローにするのではなく、信じてくれる人、必要とされる誰かの為に「力」を使う事でヒーローになる……そんなヒーローものの王道テーマを謳い上げ、そうして生き方を変える事で、周りの見方も変わって行く、と言う展開を見せる終盤はなかなか感動的。そう、人は何時からだって、誰かの為に「変わる」事が出来るのです。
そして、クライマックスでは、冴えない中年男だったエンツォが立派にヒーローとして人々を救うために戦うのです。
エピローグ、彼をヒーローと信じたアレッシアが編んだマスクを被り、“鋼鉄ジーグ”となったエンツォには、映画コピー通りに胸が熱くなると共に目頭も熱くなりました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督・製作・音楽
ガブリエーレ・マイネッティ
■出演
エンツォ ・・・ クラウディオ・サンタマリア
アレッシア ・・・ イレニア・パストレッリ
（その他のキャスト）
ルカ・マリネッリ ステファノ・アンブロジ マウリツィオ・テゼイ フランチェスコ・フォルミケッティ ダニエーレ・トロンベッティ
アントニア・トルッポ サルヴァトーレ・エスポジト ジャンルカ・ディ・ジェンナーロ
■コピー
胸熱。
■Ｌｉｎｋ
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