メ ッ セ ー ジ
ARRIVAL
これは、テッド・チャンのネビュラ賞受賞のＳＦ小説「あなたの人生の物語」を、「灼熱の魂」のドゥニ・ヴィルヌーヴが映画化したＳＦ映画です。
主演は、エイミー・アダムス。
仲睦まじい母娘。父親の存在はないが、母の愛情に包まれて過ごす娘……だが彼女は成人することなく、不治の病により命を引き取るのだった――
……
大学で教鞭を執る言語学者のルイーズ・バンクス。
ある日、地球上の１２ヶ所に巨大な楕円形の飛行物体が突如出現。宇宙から飛来したと思われる、その飛行物体に世界中で不安が広がる中、米軍のウェバー大佐が、その物体より発せられる信号を解析しコンタクトをとるべく、ルイーズに協力を要請するが……
異星人とのファースト・コンタクトものですが、この映画に描かれるのは、侵略戦争はではなく、あくまで平和的な異文化交流になります。類似作としては「未知との遭遇」が上げられますが、異文化を繋ぐきっかけが“音楽”である、とし、このコミュニケーションを光と音楽の壮大なエンターテイメントにした「未知との遭遇」に対し、こちらはあくまで“言語”でコミュケーションを試みる、と言うのが、ＳＦ小説を原作に持つ本作らしい部分でしょう。
異星人の姿がタコ型と言うのは、いささかオールドスタイルであるものの、彼らのコミュニケーションが吐き出した墨で描く文字である、と言う辺りまで含めたアイデアとしては秀逸ですし、その現れる場所や雰囲気はどこか東洋的で、荘厳な趣さえ感じさせるもの。
特徴的な飛行物体（デザインの参考となったのは小惑星「１５ Ｅｕｎｏｍｉａ」で、日本の米菓ではありません)を含め、その落ち着いた中にも印象的なビジュアルは優れものです。
ＳＦとしてのアイデアのポイントは、言語が人の思想を形あるものと成していくように、言語が人の知覚をも変容させる、と言うもの。
五次元生命体である異星人の言語を習得する中で、ルイーズの時間と空間の認知能力が拡大、過去のように未来に起きる事も知覚出来るようになっていくのです。言語の可能性を問う、その内容は故・伊藤計劃が好みそうなもので、「虐殺器官」にも類似のアイデアが見られます。
映画は、ルイーズの得たこの力により、異星人を武力にて排除しようとする最悪の事態を回避させる、と言うサスペンスを終盤のクライマックスにし、それと同時に、もうひとつのドラマを完成させます。
未来が見えるようになったルイーズには自分が直面する不幸、そして耐えがたい悲しみを知っています……しかし、それでも彼女は人生を輝かせる為にそれを選択します。
でも、それは誰しもが同じなのです――人はいつか死ぬ、その未来が避けられなくとも、それでも、人生を輝かせる為に、よりよい人生を送る為に日々努力し、歩み続ける――この物語は、そんな人生を肯定する力強いメッセージを持っているのです。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
■出演
ルイーズ・バンクス ・・・ エイミー・アダムス
（その他のキャスト）
ジェレミー・レナー フォレスト・ウィテカー マイケル・スタールバーグ マーク・オブライエン ツィ・マー
■コピー
ある日突然、巨大飛行体が地球に。その目的は不明――
■Ｌｉｎｋ
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