追
憶
これは、監督・降旗康男×撮影・木村大作と言う日本映画における２人の巨匠がタッグを組んで撮った映画。
主演は岡田准一。
富山県の漁港で殺人事件が起きた。東京でガラス屋を営むと言う被害者の川端悟は、捜査に当たる富山県警の刑事、四方篤の旧友であり、殺される前日、再会を祝って痛飲したばかりであった。
しかも、悟は、旧友の田所啓太に会いに行く、と語っており、刑事としての篤は、啓太を容疑者としてして見なければいけない立場であったのにも係わらず、どうしてもそれを報告する事が出来なかった。
実は、篤、悟、啓太の３人は、幼い頃、ある秘密を共有した特別な関係であった。
篤は悩みながらも、過去と現在の事件に向き合う事になり……
この映画、殺人事件を巡るミステリーでありながら、事件の謎解きは重要な要素ではありません。
描かれるのは、過去と現在、２つの殺人事件が繋ぐ人間ドラマです。
過去の因縁、人を縛るしがらみが生み出す濃厚なドラマ、美しい風景と叙情的な音楽、そして、俳優の感情のこもった演技で、それらをスクリーンに映し出す……正に「ザ・日本映画」とでも言うべき、昭和の日本映画が、新作として撮られた事に驚き。この内容と演出であれば、高倉健が主役であっても不思議はありません。
そんな映画を支えるのが岡田准一で、確かに彼には、高倉健にも通じる、日本の映画スターとしての風格が備わりつつあるように思えます。
その脇を固める俳優も、柄本佑、小栗旬、安藤サクラに長澤まさみと実力者揃いです。
ただ、撮影の木村大作は「女優が一番美しいのはすっぴんである」との信念から、女優陣にノーメイクを強いており、木村大作の思いとは裏腹な印象を与え、かつ不自然になっている（現代の日本では人前に出る時、大抵の女性が化粧をするでしょう）のは、女優陣には気の毒でした。
また、篤ら３人の思い出の場所は、オープンセットの建物を海辺の風景に合成しているのですが、その合成が違和感はっきり。巨匠・木村大作にして、この絵とはどう言うことか、と思ってしまいました。
それにしても、今時、こんな昭和の日本映画の「新作」が観られるなんて、と思ってしまった１本でした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
降旗康男
■出演
四方篤 ・・・ 岡田准一
田所啓太 ・・・ 小栗旬
川端悟 ・・・ 柄本佑
（その他のキャスト）
長澤まさみ 木村文乃 矢島健一 北見敏之 安田顕 三浦貴大 高橋努
渋川清彦 りりィ 西田尚美 安藤サクラ 吉岡秀隆
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