３月のライオン
後編
これは、羽海野チカの同題コミックを、「るろうに剣心」の大友啓史監督が実写映画化した２部作の後編。
高校生プロ棋士として将棋に打ち込んでいた桐山零。
新人王を獲得した零に、史上初めて七冠を制覇した宗谷冬司名人との記念対局の話が持ち上がる。
その頃、川本家三姉妹の次女ひなたが学校でいじめを受けるようになる。更に、姉妹の実父が川本家に姿を見せて……
この後編、前編で描いた棋士たちの勝負師の姿だけではなく、その人が抱えるものと、その人生を描いて行きます。零についても同様で、その弱さや未熟さが押し出され、そうした部分に向き合い成長する、青春ドラマ的要素が盛り込まれました。
確かにドラマティックにはなり、その意味で、ドラマ的な面白さは増した部分は確かにあります。しかし、個のキャラクターが立っていた印象の前編に比して、逆にその印象がぼやけ、薄味になってしまったような……しかも、盛り込まれたドラマのうち、ひなたのいじめや、三姉妹と実父のエピソードなどは、いささか凡庸なのと先が読める展開で、どうにももどかしい。
まぁ、零に対する最初の敗者である幸田家の兄妹の立ち直りと、家族再生のきっかけが描かれた辺りはよかったのですけど。
この映画、結局は零が「将棋が好き」であると認め、棋士としての自分を肯定する物語――物語としては青春ドラマの王道ではあるのですが、後編で盛り込まれた輻輳する人間ドラマによって、零が己の人生を肯定的に受け止めるようになる理由が、「将棋が好き」からぶれたように思えるのも勿体ないし、最後の宗谷名人との対決も、ちょっと唐突な感じがありました。
確かに、原作を巧みに要約、少年が棋士になるまでを描く青春ドラマとしては水準以上に仕上がってはいるのですが、最近のコミック実写化映画の中でも屈指の出来だった前編に期待させられただけに、いささか残念な思いをさせられた後編でした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
大友啓史
■出演
桐山零 ・・・ 神木隆之介
幸田香子 ・・・ 有村架純
川本あかり ・・・ 倉科カナ
川本ひなた ・・・ 清原果耶
川本モモ ・・・ 新津ちせ
幸田柾近 ・・・ 豊川悦司
二階堂晴信 ・・・ 染谷将太
宗谷冬司 ・・・ 加瀬亮
（その他のキャスト）
佐々木蔵之介 前田吟 高橋一生 岩松了 斉木しげる 中村倫也
尾上寛之 奥野瑛太 甲本雅裕 板谷由夏 伊藤英明 伊勢谷友介
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