ひるね姫
〜知らないワタシの物語〜
これは、プロダクションＩ．Ｇ．の神山健治監督による長編オリジナルアニメ。
２０２０年夏の岡山県倉敷。森川ココネは、町の小さな自動車修理工場を営む父モモタローと二人暮らしをしている高校生。
彼女は最近、不思議な夢を繰り返し見るようになっていた。夢の中で彼女は機械の国の王女で、禁じられた魔法の使い手になっているのだ。
東京オリンピック開会式が３日後に迫った一学期の最終日、モモタローが警察に逮捕されたと知らされたココネは……
これはなかなか複雑な構成の映画で、現実世界での父親の逮捕と、夢の中での王国の危機と言う２つの問題を、現実と夢を行き来しながら解決していく、と言うもの。
アニメーションとしての見せ場はやはりファンタジックな夢の中の世界での冒険。
ただ、宮崎駿の「未来少年コナン」の世界をリアルにしたような、科学と魔法が共存する世界で、美少女とメカアクションを描く……と言う狙いからして既視感が出てしまうのが厳しい部分。また、描写としても王国を襲う“鬼”はペプシコーラのＣＭ「桃太郎編」の鬼を彷彿とさせ、迎え撃つ巨大ロボットはまるで「パシフィック・リム」と、これまた既視感のあるもので……どうにも新鮮味がないのが辛いように思いました。
しかも、度々描かれる落下シーン、これが高さと、その恐怖を描けておらず、スリリングなものとなっているのも気になる所――宮崎駿をお手本にするのは、真似るのはその「絵」よりも「高さの恐怖」の演出にして欲しかった所です。
声の出演は最近の劇場映画では当たり前となりつつある、声優ではない顔出し俳優を起用。ココネは高畑充希、モモタローは江口洋介が演じています。
映画俳優と言うのはアフレコでの音声吹き込みのスキルがあり声優とのギャップは少ないものですが、この映画では、食事のシーン咀嚼音など台詞以外の音声の不自然さが気になりました。
物語のマクガフィンとなるのは、ココネの母が開発した、クルマの自動運転技術で、その技術を巡って、大手自動車メーカーの経営主導権争いや、親子の和解が描かれると言うドラマが描かれます。
ただ、内容自体過剰と思われる上に、事態の展開と問題の解決と言うのが、夢と現実を行き来するうちに片付いてしまったり、と言う、描写の混乱と言うか消化不良な感じを受けてしまいました。
キャラクターのかわいさにも欠け、萌え要素、そしてロマンスも希薄で……絵の美しさとアニメーション技術の高さの割には、どうにも物語を楽しめなかった、と言うのが正直な所です。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
神山健治
■出演
森川ココネ／エンシェン ・・・ 高畑充希
森川モモタロー／ピーチ ・・・ 江口洋介
（その他のキャスト）
満島真之介 古田新太 釘宮理恵 高木渉 前野朋哉 清水理沙 高橋英樹
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夢をみるのには、理由がある
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